寄付や贈与について学び、実践するコミュニティ「新しい贈与論」から84万円のご寄付をいただきました

寄付や贈与について学び、実践するコミュニティ「新しい贈与論」から84万円のご寄付をいただきました。

「新しい贈与論」では、毎月変わるお題に沿って推薦人が寄付先の候補を提案し、会員による投票で寄付先を決められています。PACにご寄付をいただいた2026年9月の回では、「リミナリティ」をテーマに推薦を募集し、PACのほかに「ひめゆりの塔/ひめゆり平和祈念資料館」さんと「A Minor Consideration」さんが候補となったとのことです。寄付やその金額だけでなく、コミュニティ内で「どこへ贈るか」を語り合い、決めてこられた営みそのものが素晴らしく、頭の下がる思いです。

新しい贈与論のみなさま、ありがとうございました。また、日頃よりPACの活動にご関心をお寄せいただき、ご寄付くださっている皆さまにも重ねてお礼申し上げます。

「新しい贈与論」で「リミナリティ」をテーマに、PACをご推薦いただき、ご支援たまわりました

以下、「新しい贈与論」のWebサイトからの引用紹介です。

新しい贈与論では毎月会員の投票により宛先を決定する共同贈与を行なっています。今月は「リミナリティ」をテーマに推薦を募集し、「一般社団法人 Prison Arts Connections」「ひめゆりの塔/ひめゆり平和祈念資料館」「A Minor Consideration」の3候補があがり、 中村雅之・榎本大貴の推薦した一般社団法人 Prison Arts Connectionsが最多票を得ました。

参考:「一般社団法人 Prison Arts Connectionsへ寄付を行ないました」

中村さんと榎本さんによる推薦文も素敵なので、ぜひ上記参考リンクをご覧いただきたいのですが、紹介されている投票理由から何点かこちらでも引用紹介させてください。

・自分の中で、犯罪者に対する差別意識のようなものがあるのが正直なところです。そこには、自分の「無知」がそうさせてる部分もあると思っています。だからこそ、知るきっかけがあるならば多少なりとも関わっていけたら、と思いました。(熊谷友幸)

・個人的にアウトサイダーアートに興味があり、その流れで服役囚の描く絵、も度々見た。そういった表現行為を通じて、服役をしている人が自身を見つめ直し、罪を償ったり人間性を回復・維持していることを尊いと思う。その一方で、底知れぬ悪意を抱えた人の存在もまた確実にあるのだろう、そうした人々の悪意に、自分や周囲の人間が晒されたとしたら許せるだろうか、と考え「許せないだろう」という結論に至る。Prison Arts Connectionsは、そうしたあいまいで自分でも捉えきれない領域を切り拓いていると感じました。うまく感情に名前が付けられないですが、そういう意味でも最も“リミナル”だと思い、第一希望としました。(小山田 那由他)

・自分が犯罪の被害者や被害者に近い人間である時に、加害者が社会に舞台を持つことは許せないと思う。ただ、誰でも加害者になりうる世の中でもあるとも思う。社会との繋がりを閉ざし、全てに蓋をするよりは、良いも悪いも含めて、言葉を交わせる社会の方がよいのかもしれないと思いました。色々な意見が聞けて最後まで投票するか悩みましたが、考える契機として投票します。(日比翔悟)

PAC共同代表・鈴木悠平からのお礼メールを転載

PACから、共同代表の鈴木からお礼メールを差し上げました。こちらにそれを転載いたします。PACの活動をより深くご理解いただくためにも、お読みいただけますと幸いです。

新しい贈与論の皆さま

はじめてご連絡を差し上げます。

一般社団法人Prison Arts Connections(PAC)共同代表理事の鈴木悠平と申します。

このたびは、84万円という大きなご寄付を賜り、誠にありがとうございました。運営メンバー一同、心より御礼申し上げます。

なお本メールは、投票にご参加くださった会員の皆さまお一人おひとりにお礼をお伝えしたく書いたものですので、コミュニティ内でそのままご共有いただいて構いません。

月曜日の朝、Syncableからの通知を見て「またどなたかご支援くださったのだな、ありがたいな」とメールボックスを開いたところ、まず金額に驚き、次いでお名前が「新しい贈与論」であることに、二度驚きました。

と申しますのも、発起人である桂大介さんとは友人で、このコミュニティが立ち上がった最初の一年ほどは、私自身も会員として参加し、何度か投票を経験した身なのです。その後、私自身に経済的な余裕のない時期があり退会してしまったのですが、こうして活動が続いていることを本当に素晴らしく思いますし、時を経て今度は自分たちの団体が贈与をいただく側になったことに、深い感慨を覚えています。

私たちのような小規模団体にとって、84万円というご寄付をいただけることは本当に大きく、またありがたいです。そして、寄付の金額だけでなく、毎月変わるテーマを軸に「どこへ贈るか」を皆さんが語り合い、決めてこられた営みそのものがとても素晴らしいことで、頭の下がる思いです。皆さまもご存知の通り、非営利の活動には、その性質によって、比較的支援の集まりやすいものとそうでないものがあります。事務局や財政の基盤を固め、クラウドファンディングで何百万円、何千万円と集められている団体もあり、それはそれで素晴らしいことなのですが、そうした流れには乗りにくい活動も確かにあって、私たちもその一つです。規模や分かりやすさだけではないものさしで贈り先を選び続けてこられた皆さんの実践に、あらためて敬意をお伝えしたく思います。今回ともに候補に挙がった、ひめゆりの塔/ひめゆり平和祈念資料館、A Minor Considerationのお二つも、とても大切な取り組みをされている団体と感じました。

推薦してくださった中村雅之さん、榎本大貴さん、ありがとうございました。榎本さんは私の前職での同僚で、いまも変わらずPACを応援してくれている友人です。ここにもご縁を感じます。中村さんとはまだ面識がありませんが、お二人で語らいながら推薦文を練ってくださったのだと想像し、嬉しく拝読しました。

本当はご寄付をいただいたその日のうちにお返事したかったのですが、週明けから数日ばたばたしており、遅くなりましたことをお詫びいたします。ニュースリリースでのご報告、お二人の推薦文、そして投票に際して会員の皆さまが寄せてくださったお言葉は、すべて拝読しました。活動の内容や形式だけでなく、私たちがどのような考えでそれをやっているのかまで、お一人おひとりが深く汲み取ってくださっていることに、何よりありがたさを覚えました。

今回のテーマは「リミナリティ」だったと伺いました。まさに私たちの活動とも響き合う、重要なテーマだと思います。

刑務所は、自由に訪ねて入っていける場所ではありません。壁があり、制度があり、それらが文字どおり、収容されている人とそうでない人とを分けています。けれど、皆さんが書いてくださったとおり、壁で分ければそれで終わりというわけではありません。支援する側とされる側、加害者と被害者、受刑者とそうでない人といった分け方が、そもそも自明なのかという問いもあります。壁がいますぐなくなるわけではありませんが、刑務所アート展を中心とする私たちの活動の場では、人が不思議とその境界を越え、つながり、対話する様子に何度も立ち会ってきました。

作品を預けてくださった作家の多くは、いまこの瞬間も各地の刑務所の中にいます。自分の作品が展示されている会期中も、本人が来場することはできません。私たちはいわば媒介として、その人たちに代わって作品を会場へ届けているのですが、生身で会うことは叶わないにもかかわらず、作品は驚くほど力強く人をつなぎます。来場者の皆さんは絵や俳句の前で立ち止まり、それぞれに思いを巡らせているようです。私たちの展示では作家名はすべてペンネームで、本人の手による作品紹介が添えられているだけなので、作家の年齢や性別も、どのような罪を犯したのかも、いまどこにいるのかも、来場者には分かりません。それでも、むしろ分からないからこそ、立場も居場所も異なるまま、来場者と作家が出会い、対話することができるのだと思います。まだ四年ほどの歩みですが、そういう場を少しずつつくれてきているのかなと感じています。

正直に申しますと、私たちの活動は、お金を集めることがあまり得意ではありません。ぱっと見には「罪を犯した人の支援」に映る活動ですから、そんなことが必要なのか、やっていいのか、被害に遭った方はどうなるのか、といったためらいが、直接言葉にされないまでも寄付の手前に生じるのは自然なことでしょう。外から見ても明確に「困っている/支援すべき」誰かがいて、もやもやなく手放しで賛同・応援できる、という構図の活動ではないのだろう、と思います。実際、これまで二度行ったクラウドファンディングでも、セオリーで言われる「初日の初速」「最終日の追い上げ」で大半の支援が一気に集まる、という様子ではなく、募集期間の一、二か月のあいだに、いろいろな方が少しずつ、じわじわと支援してくださるという推移でした。おそらく今回の皆さんと同じように、多くの方が「この活動はなんだろう」と考え、迷い、少し間を置いてから、それでも手を伸ばしてくださったのだと思います。寄付や支援という行為そのものが、関わる人に小さな揺らぎをもたらす、そういう性質の活動なのかもしれません。

やろうと思えば、別の道もあるのだろうと思います。一つは、「受刑者の中にもこんなにすごい作家がいる」と一部の作家や作品をフィーチャーし、原画やデザイン商品を高い付加価値で販売していくような、強いブランディングの道です。もう一つは、当事者の数や背景にある困難を示し、この活動によって再犯率がこれだけ下がります、と訴えて支援を募るような、社会的インパクトを前面に出す道です。芸術活動が自己効力感や他者とのつながりを介して、犯罪からの離脱に間接的に寄与しうることは英国などの研究でも示されており、私たちもそうした知見を参照していますから、後者の整理は部分的にはもう少し進めるべきとも思っています。それでもいまのところ、そのどちらにも振り切ってはいません。歩みは遅く、規模は小さくなるとしても、その路線に乗ることで失われてしまうものを大事にしたいと考えているからです。

今回の投票にあたって、「手放しで賛同できるわけではないのですが」「状況が変われば真反対の選択をするだろうとも思いましたが」と書きながら、票を投じてくださった方が何人もいらっしゃいました。私たちは、そうした感覚こそ大切にしたいと思っています。

展示の会場でも、応募作家たちの手紙の中でも、人が生きて関わり合うなかで誰かを傷つけてしまったこと、そしてそれによって生まれてしまった癒えない傷や痛みの存在に、私たちは触れることになります。それは確かに在るものです。一つひとつの出来事が実際にどうであったのか、司法がそれをどう判断したのかということに加えて、当事者それぞれの思いや望みや痛みには、司法の場で決着のつく部分もあれば、福祉や医療や心理の営みに支えられる部分もあり、時間が経っても癒えないものもあるでしょう。それは本当に、一人ひとり違うのだと思います。

ですから私たちは、展示に来てくださった方に「共感してほしい」「肯定してほしい」とは言いません。何かのきっかけで私たちの活動に触れたとき、その瞬間に何を感じ、どう考えるかに正解も間違いもありませんし、賛否や揺らぎがあるのは当たり前で、それを無理に分かったことにしなくていいと思っています。一人ひとりの感じ方も考え方も、変わっていくかもしれないし、変わっていっていい。変わりうる、変化に開かれている点においては、私も、皆さんも、いま刑務所の中にいる人たちも変わらない。そう考えて、対話の場を開き続けています。

作品がつくられ、それを介して見知らぬ誰かと出会い、そこからいくつもの対話が始まり続ける、私たちはそのプロセス自体に価値を置いています。結果として再犯防止や社会復帰に寄与する部分もきっとあるでしょうし、アートをきっかけに自己理解や自信や人とのつながりを得て、それが支えになった、という人がいれば、もちろん嬉しいです。ただ、それを目的として先に置くことはしていません。つくる人も受け取る人も、役に立つかどうかより前に、まず表現し、出会い、対話することそのものに価値があると考えているからこそ、一部の作品にだけ値をつけたり、課題を分かりやすく切り取って支援を募ったりする道を、いまは選んでいないのです。

いただいたご寄付は、助成金ではなく贈与ですから、皆さんも使途のご報告を求めておられないだろうと存じます。ただ、信頼して託してくださった皆さんに、いま考えていることをお伝えさせてください。展示そのものは、会期に紐づくクラウドファンディングや助成金で経費をまかないやすいのですが、刑務所から届く作品や手紙への応答や、作品アーカイブの構築といった日常の営みは、売り上げや助成につながりにくい部分です。また、刑務所におけるアートやものづくりにはまだ分からないことが多く、各地で少しずつ芽生えている実践と知恵をまとめるために、いくつかの刑務所を訪ねる調査研究も進めています。つい昨日も、メンバーとともに静岡刑務所を訪問してきたところです。使途を指定されない形のご寄付は、こうした日々の積み重ねを支えてくださるもので、本当にありがたく頂戴いたします。

推薦文にも「その往復の郵送料や、次の展示の種に、私たちの贈与が混ざっていく」という一文がありました。いただいた贈与は、その言葉のとおり、塀の内と外をゆきかう便りや、次の展示の種として大切に使わせていただきます。

皆さんのコミュニティでは月々の投票のほかに勉強会や交流会もなさっていると伺いました。話題提供などでお役に立てることがあれば、いつでもお声がけください。喜んで伺います。

長くなりましたが、このたびは本当にありがとうございました。

一般社団法人Prison Arts Connections
共同代表理事 鈴木悠平

おわりに

最後にいくつかご案内をさせてください。このウェブサイトには、メールマガジンの登録フォームや各種SNSへのリンクがあります。

オンラインでのトークイベントや活動報告、コラムや展示レポートなどを折々発信していますので、よろしければご覧ください。

ウェブギャラリーでは、応募作品を基本的にすべて、一作品ずつページを設けて公開しています。

ウェブショップでは、冊子のカタログも制作・販売しており、この6月に府中刑務所との共催で開催した「府中刑務所アート展2026」のカタログも、まもなくお出しできる見込みです。

また、今年の4月にオープンした、星野リゾートさんが手がける常設の「奈良監獄ミュージアム」に、PACも出展しています。お近くにお越しの際は、ぜひお立ち寄りください。

第4回刑務所アート展も、年内に作品募集を開始し、来年の開催を予定しています。このほかにも各地からお声がけをいただき、作品貸し出しの形での展示が少しずつ増えてきました。SNSやメールマガジンでお知らせしていきますので、タイミングが合えばぜひ足をお運びください。

日頃よりPACの活動を応援・ご支援くださっている皆さま、「新しい贈与論」の皆さまに改めて感謝申し上げます。今後とも何卒よろしくお願いいたします。

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