作品タイトル
あなたへの手紙あなたへの手紙
作者
愛梨正菜
作品本文
元気にしていますか
幸せに暮らしていますか
心配ごと等ないですか
あなたとあれだけ逢っていたのに、急に逢えなくなってどれだけ寂しい思いをさせてしまったかを考えると、今も胸が痛くなります。あなたのお母さんと私が分かれて暮らす前日の夜、私があなたにお別れの話しをしたのを覚えていますか。今考えると、あの時私はあなたに、とてもかわいそうな質問をしましたね。
「パパとお母さんと、どちらと一緒に暮らしたい?」
その私のあなたの心を顧みない残酷な問いに、あなたは「パパ」と答えてくれました。私はその時のあなたの事を胸にしまっているから、今も生きていられるのです。
今は、スマホが有れば簡単に情報が得られるから、ひょっとしたら、自分の父が何をして、今何処へ居るのかが分かっているかも知れません。
本当にあなたには申し訳ないことをしました。許して下さい。
あなたの人生の枷としかならない私を許して下さい。
私はあなたに逢えなくなってすぐに塀の中へと入りました。今ではもう26年が経ちました。あと何年居るのかもわかりません。そして、社会に戻ることすらできるかどうか分かりません。ひたすら一日一日、自分の罪を償っています。大罪を犯しながらもこうして贖罪を続けていけるのは、あなたに恥ずかしくないようにと言う気持ちが大きいのです。
ある時、私のあなたを思う気持ちが抑えられなく知人にSNSを検索してもらいました。するとそこにはあなたが居ました。
小学生の頃と比べ大きくなったあなたの姿がありました。私がいつも想像していたとおりに、素敵な人に育ってくれていました。そして、看護師と言う私から見るととても尊い職業に就いていて、そのナース姿はとても輝いていました。あなたの20年振りに見た、成長した姿は眩しくそして美しく思えました。私の目は涙で溢れて止まりませんでした。今もあなたの写真は、写真立てに飾り毎日見ています。
この中では、当然、辛いことや悔しいこと、悲しいことが沢山あります。それは私の自業自得だけど、たまには落ち込む事も有ります。そんな時、写真の中のあなたは、私に力を与えてくれます。ありがとう。
本当にあなたは私の宝物です。ありがとう。本当にありがとう。
しかし、あなたとはもう逢えません。私の思っている事も伝える機会もありません。だから今、この「あなたへ」と言う手紙に私の言葉を託したいと思います。
あなたの人生の一番大事な時に一緒に居れなくてごめんなさい。
あなたの人生の枷となってしまってごめんなさい。許して下さい。
だけど、あなたの暮らしている所とは、遠い場所だけど、あなたの幸せと健康を毎日心から祈っています。
こんな中に居てもあなたのことを思わない日はありません。
もう一度言います。あなたの幸せと健康を心から祈っています。
何が一番大切なものかを間違えた私 より
作品ジャンル
手紙
展示年
2025
応募部門
テーマ部門①「あなたへ」
作品説明
絶対に出せない手紙と言うものが私にはありこの手紙は私のその最たるものでもある娘への手紙です。心の中にある娘への思いを今回は書かせて頂きました。私は祈りは必ず通じると思うので、きっと娘は幸せだと思って毎日の務めに励みたいと思います。