囲いのバラッド – ほうき星


作品タイトル

囲いのバラッド

作者

ほうき星

作品本文

ひとつ 一人になれない もう一人だから
ふたつ ふりかえっても影はない
みっつ 見事なほどに 薄す暗い
プラトン曰く 洞窟でも影はある
ゲーテ曰く「もっと光を」 ここは光のない世界

6人居ても「おはよう」からは始まらない
ここに居るのは 言いなりになっている影だから
影を相手に号令をかけている 怒鳴っている
食事って 束の間 心を整えるはず
ここにあるのは 命を繋ぐ餌だった
なんでもかんでも願い事
まかり通るは 胡麻すり上手の常套手段
反省のフリをする別の影と立場上位って考え違いの他の影
響いてくるのは共鳴音 被れた影の嘆きのノイズ
本音が前と出たがっても ペンにも紙にも自由は無い
二律背反・パラドックスは 24時間営業中

夜空が晴れても 出来ぬは天体観測
塀に立てば届くかも ほうき星の尻尾
嫉妬・理不尽は向い風
そんな風なら背中で受けて
追い風となんて夢物語
心が閉ざされている安い宿で 許されているのは
昨夜(ゆうべ)見た夢を話す事
話し相手の名前は「壁」
「壁」が話してくれたのは
風でもなくて 夢でもなくて
私は光ある世界との境界線

嗚々 もうよそう もう止めよう
風と共に去ったアメリカ女史と習うのは
夜は考えない いい夢見よう
明日起きてから考えよう
そろそろ 自分に言うよ「おやすみ」

朗読音声

朗読:上田假奈代(釜ヶ崎)

作品ジャンル

展示年

2024

応募部門

課題作品部門

作品説明

受刑生活を経験した者なら多分、多くの方が感じたであろう様々な孤独と数々の理不尽を、「皮っ感」で表現したくて文頭の文章を数え唄風にしてみましたが、どうでしょうか。また、テーマを考えると受刑経験者は思い出したくない時間かもしれませんけど、少しおもいを馳せていただきたいのです。

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