境界を生きる – いがらしきり


作品タイトル

境界を生きる

作者

いがらしきり

作品本文

幸せを求めつづけた果てに
失ったぬくもり
予測可能なはずのながれも
こまぎれの想い出
癒しを与えんとした果てに
失った幸せ
予測不可能なはずのギャップに
保障された現実
灰色の可能性のあつまりから
択ばれた未来
満たされていた空白が
演じられた人生だったと悟ったとき
比べてみれば
違いにも気付いただろうに
現実にはさまざまなことが
叶わないまま組み合わされて
ひとつの物語が紡がれていた
いつか傷つけることになってしまう
言葉であっても 愛するのなら
そのままの気持ちを素直に伝えたい
濃くもなく 柔らかくもないけれど
あかるい光
それが私 / ぼくの見ている世界
まちがいと信じたことは何ひとつ
解き明かされないかもしれず
運命かもしれなかった偽りと
破れたアルバム
本当だと教わったことで
巧みに利用されてしまった
過ちではないかもしれない運命
汚れたフィルム
スクリーン上の暮らしに憧れて
途切れた未来
不安定なままの心で
頭に浮かんでくることになる結論
どうせならば
息が切れるまで最後まで
走りつづけてから倒れたい
今までの時間は必要か
断ちきれない想いはどれくらいか
残されたメッセージは意味不明で
書き取ったフレーズは 数限りなくずっとおなし場所で足踏みしている
雨上がり 水たまりにたまっている澄んだ青い空
なぜかぼく / 私の興味は移ってる
フィルムやテープの記録は
ノイズ混じりでも明確で
はっきりしているようでも
見分けにくくなっている
いつかきっとという言葉は
夢のつづきを見せてくれる
拾いものの希望
何かきっと意味があって
いまわたしはここにいます
どうして自分がと嘆き
わたしはここにいる
どうしてあの人がと泣き
いまわたしはここにいます
ひとりでも笑えています
そして探している
濃くもなく 柔らかくもなきけれど
あかるい光
雨上がり 水たまりにたまっている
澄んだ青い空
いまも私 / ぼくが見えている世界
右へ左へ 表へ裏へ 揺れながら

朗読音声

朗読:トーマ(フランス)

作品ジャンル

展示年

2024

応募部門

課題作品部門

作品説明

過去から現在までつづく感覚のなかで表すことのできるものの羅列です。ジェンダーや血筋による役割の重圧に負けぬようにしても耐えきれず。分析の結果、内向性や外向性など、まれな50:50で保たれる心だとされ解離性障害でわからないことも多いことの原因がわかった時、希望がある気もしています。もはや諦めるしかない。ほかに手立てはない。そう小さく呟くだけなのに、のどは焼けつくように熱く、ヒリヒリ痛むのです。未だこの手は宙を掻き、膝をついて祈る様な状態です。

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