作品タイトル
特別なもの
作者
気づきが始まり
作品本文
自分が持っていないものを他人が持っていると欲しくなる。逆に僕だけが持っていて、他人が持っていないものがある。それを皆に見せびらかすと奪われそうになる。だから、コッソリと隠し持つようになった。
ポケットの中でソっと握りしめて、心の中で「これは僕だけのもの。他の人に見せたら奪れちゃう。」と思ってずっと隠してきた。 友人から「ポケットに何隠してんだよ」と言われた時に、とぼけるのが大変だった。バレたら大変。どうにか隠し通さなきゃ。と必死。でも今まで誰にも見せたことはない。それがどのくらい“特別なもの”なのか。価値があるものなのか。調べたこともないし、人に聞いたこともない。自分の中だけでヒッソリとしまってきたもの。幼い頃は、チラッと見せたり、それを持っているような素振りをしたりして、周りから注目を浴びようとしたり、興味をそそろうとかを幼いなりにやってたと思う。楽しんでいた。
いつ頃かは分かんないけど、“僕だけ”が持っている“特別なもの”に対して、周囲からの激しい拒絶反応があった。その時、僕は何が、とか理由は分からないけど、それを人前にさらしちゃいけないんだ。見られるとまた拒絶反応を示されてしまうんだ。次、見つかったら今度こそ奪われてしまうかもしれない…とだんだん思うようになっていった。
自分でも何がなんだか分からない状況だった。当時は、分からないことが分かってなかったし、その感情が“何なのか”すら分かってなかった。
だから、主語のない「分かんない」に対して『何が分かんないの?』と言われても「分かんない」としか答えられず、会話にならなかった。
その頃から僕は困っていたし、助けを求めていたのだと思う。でも方法が分からず表現もできなかった…。小学生、中学生となるにつれて、ポケットにしまってある“特別なもの”も幼児期のように、ポケットの中で握りしめることもなくなった。でも常に側にある。意識してないと忘れちゃうくらい身体に馴染んで来た。
ポケットの中に何があるか聞かれても、「ケータイのバッテリーだよ」と難なく受け応えする術も身についた。『お前さっき、ペンケースって言ってなかったか?』とついボロが出ちゃった時も、「あぁ、それは左のポケットね。バッテリーは右ポケット」と咄嗟に嘘もつけるようになった。
大きくなるにつれ、その“特別なもの”の存在は荷物に思えて邪魔だったけど、ポケットの奥に押し込んじゃえば、まぁそこまで不便も感じずに済んでいた。たまーに“特別なもの”について、気になったりもしてたけど、そんな考えたことはなかった。それ以外にやることがいっぱいあり過ぎて、考えるなんて余裕が僕のスペースには存在してなかった。忙しいし、ただ持ち歩いてるだけ。別に使う訳でもないし、何の役に立つ訳でもない。別に重くもないし、気にはなんない。でも、ポケットのスペースがちょっと取られる。
そんな程度の軽い認識だった。
これが今までの僕が抱いていた“発達障害”に対する気持ちや感情。生活に支障をきたしてる訳でもないし、問題ないって思っていた。ずっと。でも実はそうじゃなくて、僕の人生にものすごく悪影響を与えていたということに気づいた。
作品ジャンル
エッセイ
展示年
2025
応募部門
自由作品部門
作品説明
僕の人生で”発達障害”がいったい何なのかについて考えていることが沢山あります。その中で、少しでも世間の方に伝わればと思い、数ある中から”特別なもの”を選びました。今に至るまで文章を書くことを嫌ってきたので、読みづらいかと思いますが、これから文章を学んでいこうと考えています。他の2点も読んで頂けたら嬉しいです。