「第3回刑務所アート展」(主催:一般社団法人Prison Arts Connections)の応募作品として送られてきた手紙、全44通を一冊に収めた冊子『あなたへ』を刊行しました。
「刑務所アート展」は、刑務所で過ごす人たち、刑務所とかかわる人たちの芸術表現を集め、展示することで、塀の内と外をつなぐ対話を生み出す活動です。創作や表現は、誰かに見てもらい、反応を得ることで、コミュニケーションが生まれ、作者と受け手双方の新たな気づきへとつながります。この展示を通じて、刑務所の壁の向こう側にいる人々に作品を発表する機会をつくるだけでなく、それを受け取る私たち自身も、刑務所やその中で生きる人々について深く考え、想像するきっかけを持ちたいと考えています。
2025年5月24日~6月14日に東京都・墨田区にて「第3回刑務所アート展」を開催しました。同展では、テーマ部門として「『あなたへ』―たった一人に向けた匿名の手紙たち」と題する、匿名の「手紙」を募集する企画を立てました。
手紙の送り主=応募作家はペンネームで、手紙の宛先はすべて「あなた」という代名詞で記されています。匿名の文章から、二人の関係がおぼろげながら浮かび上がってきます。そして筆跡からは、書き手の息遣いがきこえてくるようです。
震災で他界した配偶者へ、昔の恋人へ、刑務所に入る頃はまだ小さかったわが子へ、かつて自分を苦しめ痛めつけた相手へ、刑務作業でつくった点訳本の読者へ……集まった44通の手紙には、さまざまな「あなたへ」の思いが綴られていました。
展示会場にはすべての応募作品を展示し、来場者が一通一通、直接手にとって自由に読んでいただけるようにしました。また、来場者から応募作家に向けてお返事の「手紙」を書いて投函することができるスペースも設けました。来場者のみなさんからお預かりした49通の手紙は、会期終了後、刑務所にいる応募作家一人ひとりに送付しています。
この冊子では、「あなたへ」応募作品全44通を、手紙に込められた「感情」のかたちに着目し、4つの章に分けて収録しました。作品原本である手紙の1枚目の画像に続き、全文テキストを掲載しています。
共感できるもの、できないもの。まるで自分に向けられた手紙のように感じるもの。思わず返事を書きたくなるもの―「作品」として送られてきた手紙を手に取った鑑賞者=本来の宛先とは別の「あなた」にとって、それはどんな意味を持つのでしょうか。手紙に込められた作家たちの思いに、そしてそれを受け取ったあなた自身の心の動きに、じっくりと耳を傾けてみてください。
一般社団法人Prison Arts Connections『あなたへ: たった一人に向けた匿名の手紙たち』
ペーパーバック:1,650円、Kindle版(電子書籍):1,250円