「刑務所アート展」活動報告&未来会議を開きました

「『刑務所アート展』活動報告&未来会議」を6月5日にオンラインで開きました。

当日は刑務所アート展を運営する私たち「Prison Arts Connections(プリズン・アーツ・コネクションズ)」について改めてご紹介し、第2回刑務所アート展の活動報告を行ったほか、運営メンバーを含めご参加いただいた24人の方々と共に、次の1年、さらに5年、10年先も見据えた「未来の物語」を描く時間を設けました。

たくさんの方にご発言いただき、2時間超に及ぶとても熱い時間となりました。

当日使用したスライドも、ご覧いただけます。また、当日の録画もYouTubeにアップしています。

「刑務所アート展」 活動報告&未来会議スライド(2024年6月5日 オンライン開催)

YouTube映像

参加した方からは、「盛りだくさんな内容で参加してよかった。活動報告では収支も含めて説明があり、刑務所アート展を続けていくためには今後のPACのファンドレイジングが益々必要なんだなということがわかった。何より印象的だったのは質疑応答で、さまざまな方が当事者意識を持ってこの活動を見守っているということがひしひしと伝わってきた。私もその一人として、今後も活動を応援していきたい」というご感想をいただきました。

Syncableというオンライン寄付サービスにて、寄付会員の募集も始めました。金額や頻度をお選びいただけますので、どうぞご無理のない範囲で、私たちの活動を支えていただけると幸いです。
https://syncable.biz/associate/prisonarts

をよろしくお願いいたします。

文字起こし

鈴木悠平(以下、鈴木):みなさん、こんばんは。今日は刑務所アート展活動報告&未来会議にご参加くださりありがとうございます。運営団体Prison Arts Connectionsの鈴木悠平です。後で他のメンバーも自己紹介しますが、私たちはこの5人で刑務所アート展を中心とするPrison Arts Connectionsの活動を運営しています。

この4・5月は、アート展が終わった後の会計や応募者へのフィードバック、ご支援いただいた皆さんへのレポートなどをやっていました。6月になり、次の活動を本格的にやっていこうということで、今日は3月に実施した第2回刑務所アート展の実施報告と、来てくださったみなさんも様々な活動をされていたり関心をもっていたりする方だと思うので、みなさんの声もお聞きしながら一緒に未来を描いていく時間にできたらと思っています。

ここからは画面共有をしながらお話していきたいと思います。私も画面共有でお見せしますが、チャット欄に運営メンバーがちょくちょくスライドやWebページのリンクなどを流していくと思います。適宜、そちらもご覧いただければと思います。

はじめに事務的なアナウンスです。今日はみなさんそれぞれ過ごしやすいように過ごしていただければと思っています。もちろん聞くだけの参加でも大丈夫なんですが、少し何か発言したい方がいらっしゃいましたら、Zoomの表示名を今日読んでほしいお名前を設定していただければと思います。あと、チャット欄ではスタッフから適宜URLなどのご案内もしますが、みなさんも随時質問やご感想、思いついたことやアイディアとか気軽に書き込んでいただければと思います。全てその場で拾えないかもしれませんが、読ませていただきます。

あと、マイクですね。なるべく話したい人が話せる時間を作りたいと思ってますが、私の全体の進行やあるいは他のどなたかが発言しているときは、その人の音を取りやすいように話してない方はミュートにしていただいて、自分がお話しされるときにマイクONにしていただければと思います。ビデオのオンオフはどちらでも構いませんが、差し支えなければお顔やアイコンを見せていただけると嬉しいです。

今日のイベントもそのまま全て録画して、Prison Arts ConnectionsのYouTubeチャンネルにアーカイブする予定です。喋りたい方は、そのまま録画が残っても構わない方はマイクやビデオをオンにしていただければと思います。途中入退室自由ですので、ご体調やご予定に合わせてご無理のない範囲でご参加ください。

今日は私たちの自己紹介といいますか、どのようなことを大事にして活動している団体なのかということと、この間実施した第2回刑務所アート展の報告、これからどのようなことをやろうとしていてどのような未来を作っていきたいか、運営メンバー5人で話して現時点で言葉にできたものをご共有するとともに、みなさんにもどんどん自由にアイディアや言葉を投げ込んでいただければと思っています。

早速ですが私たち、Prison Arts Connectionsについてのご紹介・ご挨拶です。

刑務所アート展が中心となる1番大きな活動なんですが 刑務所で服役する受刑者の人たちは、塀の中にいるため芸術表現を自由に発表できません。でも、表現したいものや表現物はあるので、それを媒介として刑務所の内と外、あるいは被害/加害の立場を超えた対話と回復の契機・始まりを生み出し続けることを活動目的として掲げています。今日も来てくださった方も、たぶん刑務所アート展をきっかけに知ってくださった方がほとんどだと思います。刑務所アート展の企画運営を中心に、その中で集まってくる作品を物理的に、あるいはデジタルでもちゃんとアーカイブに残していくことや、今回カタログを作りましたが作品を活用した商品開発・販売、あと「刑務所とアート」に関する状況・課題はやっぱりまだまだわかっていないことも多いので、調査研究で明らかにしていったり。あと、展示ももちろんその1つなんですが、この活動や目的に関心をもって共感してくださる方と対話する場、このようなオンラインでのイベントやメディア運営も含めて刑務所内外を繋ぐ「場」を作っていきたいと思っています。今日のこの場もその1つです。

始まりについては、風間さんに喋ってもらえればと思います。メンバーの1人、風間勇助の個人プロジェクトとして「マザーハウス」という受刑者支援をしているNPOと、風間さんの友人有志の協力で2023年に実施したのが始まりです。風間さん、何か一言ありますか。

風間勇助(以下、風間):元々、私が刑務所の中の表現に関心を持ったのは、かつていた永山則男さんという著名な獄中作家の方の展示にたまたま出会っちゃったんです。そこから「確かに壁の向こうに表現があるけれど、見る機会がなかなかないよな」と思い、そこからまずNPO法人マザーハウスとの関わりが始まりました。

ただ、コロナ禍などが重なってなかなかやるにやれない状況が続き、また自分自身でも調査が必要でした。刑務所のスタッフや元受刑者の方に話を聞いたりして「こういうことだったらやれそうかな」みたいなことをようやく実現できたのが2023年です。

本当にはじめてだったので「作品届くのかな、集められるのかな」とドキドキしながら、あるいは社会からの評価や反応として「刑務所の中にいる人が表現活動なんて、芸術なんて」という反応が来ないかどうか、色々なことを探り探りしながら第1回をやってみたら、本当に色々な方に来ていただけました。「必要な人には届く活動なんだ」と理解して、少しだけ自信をつけて「これは続けていかなければならない活動だな」と思い、このメンバーが集まってくれました。それで、第2回に繋がったという感じです。

鈴木:それがはじまりですね。僕は数年前からマザーハウスのちょっとした手伝いをしていて、そこで風間さんと出会いました。僕も、自分の人生でもちょっといろいろあって、やっぱり何かしら人を傷つけてしまったり過ちを起こしてしまったりして。ただ、その後の人生は1人1人続いていくから、そのうえでどのようにそれぞれが自分の行為やそういったものと向き合って生きていくのか、変わっていくのかといろいろ思っている中で、偶然「こういう団体があるんだ」と知りました。

風間さんが第1回の展示をやったとき、僕も見に行って「これを続けたいね」といろいろ話していました。この後一言ずつ自己紹介していただきますが、かずえさん、萌さん、杉田さん、3人は元々僕の友人なんですが、文章やデザインなどそれぞれに表現方法や強みをもっている僕が信頼するメンバーです。最初は風間さんと2人で話していたんですが、活動を続けていく形にしていくためにチームを作ろうということで、声をかけました。

それでは、あいうえお順で、かずえさん、萌さん、杉田さん、簡単に自己紹介をお願いできますか。

大森かずえ(以下、大森):美術家、絵描きをしております、大森かずえと申します。出版社やデザイン関係のお仕事をしてきた経歴があるので、刑務所アート展ではデザイン全般とカタログの編集などをさせていただきました。

私自身、風間さんに出会うまであまり考えたことがなかった分野だったんですが、考えるに至るとやっぱり思うことがたくさんあり、「刑務所の中の人と自分たちは、結構紙一重のところなんだな」と感じたり、表現の幅がまたいろいろ広がるんじゃないかなと勝手にわくわくしたり、いろいろと学ばせていただいてます。よろしくお願いします。

黒木萌(以下、黒木):黒木萌と申します。普段は、ざっくりいうと社会的な企業や団体の広報や事務、ライティング周りの仕事をしています。

最初から刑務所アート展に関心があったというよりは、悠平さんに誘われて気軽に「関わってみようかな」と思ってPrison Arts Connectionsに関わり始めて、いろいろなことを知りました。刑務所って、それまではやっぱり縁遠いというか、あまり身近ではなかったんですが、いろいろなことを知るにつれて人権や「1人の人間」だとか、塀を隔てた中と外のこと、対話などについて考えるようになりました。それがすごく、この言い方が適切かわからないですが、私にとって面白かったんですね。とても面白くて、アートには元々興味がありましたし、すごく自分の知的好奇心をくすぐられるなという思いです。

ただ、センシティブなものでもあるので、自分の中でも揺れつつ考えつつ、学びつつという感じで日々関わらせてもらっている感じです。だから、この先もいろんなことを知りながら、自分のペースで関わっていけたらなと思っています。どうぞよろしくお願いします。

杉田曠機(以下、杉田):初めまして、杉田です。今日は仕事の関係で出先でジョインしているので周りの音が少しうるさいかもしれないんですけど、すみませんが話していきます。

まず、私は元々20年近く書道家として仕事をずっと続けてきていまして、その流れの中でウェブデザインやロゴのデザインも受けられるようになり、クリエイティブの仕事と書道の仕事を両軸で続けてきました。今回は書道の審査員としても入り、Webやロゴ周りに関わらせていただいています。

書道などに入る前、僕は実はどちらかというとアートとアクティブイズムの関係性に興味があって、大学生時代には憲法九条の会や原発問題とかそのようないろいろな活動に何度も赴く機会がありました。ゼミも所属と関係なく、憲法について学ぶゼミにわざわざ自分から学びにいかせてもらったりしていて。元々そういう動きがあったので、その時代に刑務所や死刑の問題も自分なりの理解をしてはきたんですけども、実際こうやってお話をいただいて刑務所の中でアートを書いている彼らの作品や言葉を読んでいって、よりちょっと身近に感じられるようになりました。今回、やっていってそれがすごくよかったなと思いながら入っています。

元々興味がなかったわけじゃなくてものすごく興味がある部分ではあったので、こうして悠平さんからお話をいただいたとき、僕はもう二つ返事で「ぜひ」という感じでした。ここで関わらせていただいていることに今でもずっと感謝しています。よろしくお願いします。

鈴木:ありがとうございます、メンバーの簡単な自己紹介でした。

このまま僕がしばらく喋り続けるので、みなさんも随時チャット欄を自由に使ってください。途中で何か言いたくなったらマイクをオンにして、止めていただければと思いますが、このままいきます。

この5人が集まってチームを作り、その時点では「Prison Arts Connections」という名前はまだ決まってなかったんですが、メンバーで対話を重ねて。第2回刑務所アート展をやろうということはもちろんですが、僕たちは何を大事にして、どういうことを目指してやっていくのかというのを言語化したり、それを団体名やテーマカラー、ロゴに落とし込んでいくプロジェクトをやってきました。それで出来上がったのがPrison Arts Connections、略称は頭文字をとってPACと覚えていただければと思いますが、このロゴと団体名に込めたメッセージを少しご紹介できたらと思います。

「PAC」の文字の横にあるアイコンは、刑務所はもちろんその1つですが私たちを隔てる壁を象徴しています。私たちを隔てる壁というのは刑務所を囲う物理的な壁もそうですし、差別や偏見といった心理的な壁も間違いなくあります。「アートがあれば壁なんか関係ないし、すぐなくなるんだ」という簡単なものではないんだけれども、でもその壁を越えていく、あるいはその壁が薄めていく手段は必ずある。壁を越えて、でも空は繋がっているよねということで、空の青をグレーと合わせてテーマカラーにしています。

あと、Prison Arts Connectionsという名前。「刑務所アート」というのが、英語ではプリズンアート、プリズンアーツだからその言葉は入れなきゃねとなり、それにConnectionsを加えてPACという団体名にしました。

「Arts」「Connections」と複数形にしたのもちょっとしたこだわりです。壁を越えて対話を生み出す表現技術、アートと、繋がり。今日みなさんに来ていただいているのもその1つだと思いますが、「刑務所アート、刑務所内外の繋がりとはこうあるべきだ」と1つの方向に固めるのではなく、その複数性・多様性を大事にするということでSをつけています。

この文章は僕が作ったんですが、後でよかったらWebサイトのCONCEPTを見てもらえればと思います。少し詩的なイメージをもって、キャッチコピーとして「『壁』を越え、『はじまり』をつくり続ける」を掲げました。これを活動のよりどころにしたいと思っています。

「はじまり」には、原始時代から壁画を描いた人たちが先祖にいるわけですが「表現する」というのは人間の始まりとともにあって、自分が感じたことや考えたことを表現したい、誰かと共有したい、あるいは後の世代に受け継ぎたい、あるいは受け取ったものを返していくのもまた1つの表現ですし、私たちが生きる上での根源的な欲求から表現というものは生まれてきたんじゃないか、ということを少し書きました。でもやっぱり、表現にはうまく伝えられるときも、そうじゃないときもあるじゃないですか。あと、自分は「こういうことを伝えよう」と思って絵や文章を書いても、それを受け取った人が「こんなことを感じ取ったよ」「こういうことを言いたかったのかな」と自分が意図してなかった新しいものを発見してくれることもある。でもやっぱりうまくいかなくて、表現によってぶつかり合ったり傷つけ合うこともある。それは、私とあなたは同じこともあれば違うこともあってそれが当たり前なんですが、共に生きていく上で、全部が重なるわけではないけれどその違いも含めて尊重するという「共に生きる術」を学ぶのも、また表現の成せる技かなと思っています。

犯罪の背景や要因をここで詳しく話す時間はありませんが、犯罪という人や物の安全を脅かすようなことが私たちの生活にやっぱり危害であるから、法と社会の決まりごととして犯罪が、あるいはそれに対する裁判、警察などを人間社会はこれまで発明してきたわけです。何かしら誰かを傷つけてしまった犯罪は、本当はもう少し別の表現方法があったはずなのにそうできなかったというのは、他者への想像力を巡らせられない、そうせざるを得ない閉じられた人間関係なども影響の1つとしてあるんじゃないかと思います。

そうではない表現方法を、刑務所内外を結ぶ「刑務所アート」という取り組みで実現できないか、ということで私たちの団体を立ち上げました。そのようなことを少し文章にしてみたものがあるので、よかったら後で読んでいただけると嬉しいです。

「刑務所アート」って何だ、というのもまた喋ると長くなってしまうんですが、「受刑者アート」「アウトサイダーアート」ではなくて「刑務所アート」という言葉を選んだのにも、意図・考えがあってメンバーでいろいろと議論をしました。「受刑者」というその人の属性ではなくて、「刑務所」という場所・環境の中で、受刑者はもちろんそれ以外の人、刑務所という制度と関わる人たちによって生み出される芸術表現を「刑務所アート」と私たちは定義しています。

それはやっぱり、刑務所という制度や環境では使える道具も限られているし、刑務所の外にいる私たちと違って作ったものをすぐにネットに出して発表することはできない。でも、その時間や空間の中で生まれる表現にはそれゆえの特徴・メッセージが生まれるんじゃないかということですね。刑務所アート展も受刑者の人たちに募集案内を出して作品を集めていますが、そもそも発表やコミュニケーションの機会が圧倒的に乏しい状況にあるので、服役中の受刑者の方へのアプローチ、「作品を作ってみませんか」と今年も来年も呼びかけて刑務所アート展を続けて開いていくことに注力していきますが、でもやっぱり「刑務所アート」と掲げているので受刑者だけじゃなく出所した人やご家族、刑務官や保護司など刑務所に関わる色々な人の表現も、今後一緒に生まれていって展示できたらな、という可能性や広がりも含めてこの言葉を掲げています。実際、第2回刑務所アート展にも風間さんがマザーハウスやその後の活動の中で個人的繋がりもある、出所した2人の元受刑者の方も作品を送ってくださったので、その作品も展示しました。

PACの立ち上げに当たってクラウドファンディングを実施しました。今日もご支援してくださった方がおられると思います、本当にありがとうございました。延べ220人の方から243万7000円のご支援をいただきました。

ここからはパート2として、第2回刑務所アート展の活動報告に入ります。僕がぱーっと喋っていますが、みなさん本当にコメントや書き込みがあればしてください。

3月20~30日に北千住のBUoYというギャラリーで実施しました。来場者数は、交通整理やバードウォッチングで使うカチカチするやつでスタッフが数えたので多少のずれはもちろんあると思いますが、延べ555人の来場者を記録しました。この後どんどん写真をお見せしますが、会期中にトークイベントをしたり、あるいはたくさんの方から作品を見た後のフィードバックコメントもいただきました。カタログのご購入やご寄付もいただき、ありがとうございます。

入口はこのような形、こんな感じで写真をお見せしていきます。ちょっと今、隣に1歳児が乱入してきたんで声が入ります、すいません。

展示は3部構成で、第1部は今回の第2回刑務所アート展に応募してくださった受刑者の作品を全て展示しています。絵画もあれば、俳句・短歌や小説などのテキスト作品もあります。テキスト作品は手書きのものです。原稿や便箋をそのまま置いています。絵画もかなり作風が多様で、人物画や風景画、少し風刺画的なものもあれば非常に穏やかな絵もありますね。あとは漫画、何十ページもの力作の漫画を送ってくださったり。

下に貼っている作品の説明や作家のペンネーム、タイトルも応募用紙のフォーマットとしてあってこれも送られてきます。これは、この方は俳句など他にもいろいろ作品を送ってくださったんですが、そのうちの1つとして楽譜を作っていたんですけど自分では納得できなくて「お蔵入りです」と、作品はなしで説明だけが送られてきました。ちょっと想像力をかき立てられるようなものだったので、このような展示をしました。

そして第2部ですね。こちらには、元死刑囚の長谷川俊彦さんと死刑囚の奥本章寛さんの作品と資料を展示しています。そして、NPO法人CrimeInfoさんのご協力による、刑務所について知る写真パネル。あと、刑務所で使える道具は限られているんですね。それと全く同じではないですが、元受刑者の方のヒアリングなどを参考にしつつお店で買い求め、貼っております。このように風間さん宛に封筒で送られてくるんですが、それも少し展示しています。その方の個人名は伏せて、その人を表すような筆跡として展示しています。あと、刑務所ごとに少し違うんですがこのように検閲印が押されるんですね。このように、背景や制度も知ってもらえればなと思って展示しています。

会期中に2回、東京大学の共生のための国際哲学研究センター(UTCP)との共催で、作品を見て思ったことをグループで分かち合う「哲学対話」というイベントをやりました。2回とも満員御礼でとても盛り上がりました。今回、作品審査員の1人でもあるデザイナーのライラ・カセムさんと僕が司会進行をして、最初はちょっとみんなで輪になってトークした後に1時間くらい時間をとって、グループに分かれて作品を見て回って対話して、すごい熱気でした。

作品を収録したカタログも作ることができました。第1回では展示はしたんですがカタログは残せなかったんですが、チームを作ってクラウドファンディングや助成金によって第2回で新たに実現したものです。

このスライド自体もWebにアップしていますが、オープニングトークは配信してそのままアーカイブしていて、会期中に風間さんがiPhoneでお客様が入る前の会場を撮って回ったバーチャルツアーも動画に残しているので、Webで「こんな会場だったんだ」と見ていただくことができます。また、色々なメディアの記者さんがで刑務所アート展をも紹介してくださっていて、その記事をWebサイト上でまとめています。そして先ほどのカタログも、オンラインで購入できるようになりました。

アーカイブを大事にしていて、作品画像と先ほど写真でお見せした作品説明のテキストなどはすべてWEBサイトにギャラリーというページを設けて、第1・2回の分、そしてこれからの分もアーカイブしていきます。Web上にはコメント機能もあるので、コメントを残していただくこともできますし、いただいたコメントは受刑者の作家の方にお伝えしたいと思っています。

ここまで駆け足で喋りましたが、展示に来てくださった方やWebで見ていてくださった方、あと僕以外のメンバー4人とか、展示を振り返っての感想や質問があれば、少し語らう時間にします。

風間:この展示の特徴だなと僕が思うのは、第1回目も第2回目も来場された方の滞在時間がすごく長いんですね。さーっと見ていく人が少なくて、とても長い時間過ごしてもらえております。普通の美術館で見る美術展より、じっくり作品を見てもらえているんじゃないかなと感じます。そのことは応募者の方にも本当に伝えたくて、手紙を通して本当にじっくり見ていただいてますと伝えております。

今回の会場だった北千住のBUoYというギャラリーは、その横に比較的若い方が来るカフェを併設しています。もちろん展示をめがけて来た人もいるんですが、カフェを目的に来て「あれって何だろう?」とふらっと入ってくださる方もいたのが、すごくいい会場だったなと思います。作品がたくさんあるから、ちょっと見てカフェで休憩して、もう1回入るというようにカフェと展示を行き来している方もちらほら見受けられました。

私が印象に残ったのはそのあたりですかね。ごめんなさい、萌さんを遮ってしまったかな。

黒木:いえ、全然まだ話してなかったです。作品のキャプションを受刑者の方ご本人が書かれているんですが、手書きの文字が1人ひとりもちろん違っていて、1つとして同じものはなくて。私の友人もたくさん来てくれたのですが、それにすごく感じるものがあった人が多かったなという印象を受けています。私自身もそうでした。

あと、感じたことや考えたこと、作品を見て葛藤した方もたぶんたくさんいらっしゃったと思うんですが、それを帰ってからご友人やご家族、パートナーと一緒にお話をしてくださったという話も聞いてすごくありがたかったし、嬉しかったし、やってよかったなと思った次第です。

風間:杉田さんやかずえさんはいかがですか。全然本筋じゃないし関係ないんだけど、設営の舞台裏で僕がすごく覚えてるのが、杉田さんがヤスリがけをしていて。ちょっとささくれだっているテーブルを、怪我をしないように非常に丁寧にヤスリをかけていただいていて。

杉田:すごく汗だくになりながら、途中から「俺、何でこんなにヤスリかけてるんだろう」と自問自答しながらやってました。

犯罪を犯した方が入っているところにいる人たちの作品を置いているので、刑務所アートを見ながら誰か1人でも怪我したとなるのが僕はすごく嫌だったんです。少しでも気持ちよく見れるようにそこは最後までしっかり丁寧にやろうと思って始めたんですが、途中から本当に「何で自分はヤスリをこんなに擦っているんだろう」と思ってました。

風間:でも、実際にお子さんも結構見られたんですよ。お子さん連れで来てくださる方もすごく多くて、本当に助かりました。

鈴木:僕も連れていきました。

風間:昨年もちょっと危ない場面があったんです。お子さんが走ってしまって、実際に頭をぶつけたということがあったので。今回はなかったんですが、大変ありがたかったです。すみません、本筋ではなく舞台裏なんですが非常に設営を頑張ってやりました。

杉田:ありがとうございます、すごく頑張りました。本当に貴重な体験ができる場だと思うんです。みなさんがなかなか出会えない作品というか、美術館に行ったらアーティストのアートは見れるし一般の方々のアートも見れるけれども、受刑者のアートというのはなかなか見れない。それを見ることで見る前と後では価値観がどこかしら大きく変わるだろうし、僕自身も変わったので、それを体験させることが展示会を続ける意味なんだろうな、その母数を増やしていく、展示会ではその体験が1番大事なんじゃないかなと少し思いました。

やすりのことも、言われるまで本当に忘れてました。かずえさんはどうですか。

大森:現場班だったので、どちらかというと脳みそよりも身体を使ってました。脳みそも使ってましたけど、とにかく限られた時間の中で設営をしなきゃいけなかったので、ひたすらハレパネを貼っていたような気がします。ハレパネを貼って、どうレイアウトを完成させようか、と。やっぱり実際に入ってみると、最初に考えてたのとは適切なレイアウトが違って。割と間隔や直感でいろいろと展示スペースを作っていっちゃうところがあったんで、そこはやっぱり、現代アーティストで今もずっとやっている弓指さんなどのアドバイスが結構大きかったです。最初はキャプションも手書きじゃなくて、打ち込んだものを使おうと一応データを作って、ハレパネを作れるようにしていたんですが、設営になって「やっぱり本人たちの生の文字があった方がいいよね」という話になって、急遽そこで切り替えた形でした。それがやっぱり、みんなの印象に1番残ってたんだなと思いました。

鈴木:これもクラウドファンディングをやったおかげで実現したんですが、アクセシビリティ、やっぱり対話やコネクションとか言っているのにその取り組みが非常に排他的であっては矛盾だと思っていて、僕らはアクセシビリティについて可能な限りいろんなところを考えてやっていました。そもそもアート作品の鑑賞体験はもちろん1つの方法や受け取り方に収斂するものではないんだけれども、なるべく1人1人が自分のペースや自分の体に合った形で作品を鑑賞し、鑑賞を通して対話できるようにとをすごく考えていて。

それには両方があるんです。さっき、キャプションは手書きだとお話ししましたが、俳句のように打ち込んで印刷しパネルに載せたものもあるんですが、詩やエッセイなどのテキスト作品、あるいは絵画にも貼っていますがその下の作品説明・キャプションなど、手書きを貼れるものは基本的にそのままで出しています。それは、目が見える人にとっては作品そのものだけでなく、その質感や筆跡も含めて観賞する媒体になりうるからです。

一方で、今回のカタログもそうですし、会期中に東京に来られない方もおりますが、WEBサイトのギャラリーで作品を開いていただくと、このように手書きの画像があって、俳句などはテキスト化してサムネイルにしているんですが、筆跡を見れる写真があります。今日来てくださってる方もいますが、これを作る過程でボランティアとして手伝ってくれた仲間たちがいて、全作品の手書きの応募用紙からタイトルと作者と作品そのもの、画像乃至テキストと、ジャンルと第何回のものか、こちらも手書きで来ていた作品説明を全部デジタルテキストデータにして、検索や読み上げができるようにしています。例えば視覚障害がある方も、WEBであればアクセシブルであると。

あとはさっきの話のように、展示会場も可能な限りアクセシブルであるようにと杉田さんがやすり掛けしてくださったりしました。僕たちも、運営スケジュールの中で会場の選択肢がそんなに多かったわけではありませんでした。今回の会場だったBUoYはすごく素敵なギャラリーですが現状エレベーターがなくて、それはいかんともしがたい。けれどもその中でできることをということで、オープニングトークの配信・アーカイブ、先ほどお話したバーチャルツアーをYouTubeにアップしたりしました。

正直階段はこんな感じで大きな電動車椅子だと難しいですが、手動で1回降りてという方であれば登る手段もなくはない。「もし車椅子ユーザーで参加したい方がおられたらご連絡ください」、あとは「もし読み取りに困難がある方は何かあればスタッフにお声がけください」、僕も子供を連れていきましたが、さっきのヤスリがけも含めて「なるべく保護者の方が見ていただければと思いますが、我々も安全に気をつけています」とも掲示していました。

実際どのような方がおられて、あるいはWebの方でどのような方がどれだけ鑑賞してくださったかはわからないけども、可能な限り色々な方に来ていただけるようにやりました。

このようなこともリソースがなければできません。だから「こういう非営利活動や社会的なことはお金や人手がないからやらなくていい」とともすればなりかねないし、なっているところもあります。でも、それはどうなんだと僕は思っていて、100点満点とはいえませんが今後も色々な人たちができる限り多様な参加をできるようにしていきます。会期は終わりましたが、このイベントもその1つだなと思います。もちろん会期中の会場でのライブの鑑賞体験というのもあるんですが、それ以外も含めていろいろと工夫していきたいと思っています、というのが第2回の刑務所アート展でした。

151枚、本当にたくさんのコメントシートが集まりました。すごく書いてくれましたね。ちょうど質問をいただきましたが、みなさんからいただいたコメントをどのようにしたかというのを風間さんからお願いします。ついこの間郵送したと話していました。

風間:今回応募してくれた受刑者が50数名いたんですけれども、展示が始まる前に既に出所してしまった人が3名ほどいました。その方には残念ながら、というかそもそも「展示がされる頃には私はもう出所しております」というお手紙をもらっていたので、その方にはいずれ展示会場に来てくださることを願っています。

それを除く方には、展示カタログとこのイベントのような「無事展示がやれました」という開催報告とレポート、会場でみなさんに書いていただいたコメントシートを同封して送りました。この間、マザーハウス事務局の方に確認したら「戻ってきてない」というので、ちゃんとカタログの冊子も含めて入ったんだと思います。もしかしたら(45:18)されてしまって手元にはいってないかもしれないけれども、とりあえずは戻ってきてないということでした。ただ、会場の方が書いてくださったコメントシートは本当は手書きのものを送りたかったんですけれども、事前に色んな方に相談したところ、色々な筆跡のバラバラとした紙は10何枚も入らないだろうとアドバイスを受けまして、今回は申し訳ないですがボランティアの方が手入力をしてくださったものでコメントを返した感じです。

どうしても人気作品といいましょうか、コメントが集中する作品はあるんですが、少なくとも私が受け取った感想はもう個別に、手書きの手紙で送っています。この刑務所アート展の裏側では、このような応募者との交流もしています。なるべく手書きのものが届くようにはしたいんですが、第3回目以降はそのやり方もどうしようかなと、毎年毎年色々なことを改善しながらという感じになります。

鈴木:まさにこうやって対話を媒介するのが、受け取って展示して終わりではなくフィードバックするところまで含めて私たちの大事な活動です。ついこの間応募者ごとに仕分けして、風間さんが投函してくれました。コメントシートは応募者ごとに簡単な仕分けをしたんですが、先ほどもありましたがやっぱり郵送で送れる紙の枚数・分厚さなども、まさに刑務所と我々の壁ですよね。塀の外では、もちろん重さや大きさによって料金は変わるけども、そのお金を払えば郵便や宅配サービスの利用に制限はない。でもそういったところにも制約が発見されたりします。だからギュッと1枚に凝縮したものを作って、これとコメントシートと、あとはカタログを送りました。

各部門で部門賞を受賞された方がいて、カタログには審査員の講評も載せました。受賞した人には「あなたは受賞しました、こんな方が審査員でした」と簡単に作って、同封しました。4月5月はそのような事後対応をやっていました。

先ほど、作品をずっとアーカイブして活動を続けていくと言われましたが、僕らが活動をやっている間に出所して返送するときにはその刑務所にはいない、という方も可能性として当然います。その方と直接コンタクトを取る手段はなくなるわけですが「刑務所アート展」とその人がWebで検索してくれればPACのWebサイトにたどり着いてくれる。問い合わせフォームからご連絡くださったら「あ、どうも」とお会いできたり、あるいは、現に第2回にも2人の元受刑者からの作品がありましたが、出所した方とトークイベントをやったりなど、そんな未来が来るんじゃないかと思っています。

風間:ミラクルを思い出したのでいいですか。刑務所アート展が終わって、撤収していたらわかりにくい建物だからか3人くらい間違えて入ってきた人がいて。宅配便で間違えて入ってきた人がいて、そのうちの1人に「この刑務所アート展ってなんですか」と聞かれて、撤収してる最中だったたんですが「こういう作品を展示するイベントを今日までやってたんです」と言ったら「自分も刑務所にいたことがあるんだ」と言われて。そういう流れでここがこうだあれがああだとちょっとだけ話ができて、そんなことあるんだなと思いました。我々も大変便利なことにそういう配送をたくさん使ってますけれども、そういう人の中にもだから当たり前にいるし、言わないだけ知らないだけで本当にどこにだっているんです。もう既にこの社会で一緒に生きているということなんですよね。それがたまたま間違えて入った先に、刑務所なんていう文字を見て話しかけてくれたというのはちょっとミラクルだし、結構驚いたし嬉しかったです。そんなことがありました。

みんなで剥がしたりしてたんだけど、最後のちょっと整えるとこだけ僕が残ってやっている最中に来ちゃったので、なんか僕が嘘をついているみたいな感じになりそうで、「やだ、早くみんなに教えたい」みたいな。びっくりしました。

鈴木:このようなこともあり、そんな感じで第2回刑務所アート展が、先日投函した応募してくれた受刑者へのフィードバックも含めて終えることができました。

今は順次CAMPFIREでご連絡をしておりますが、クラウドファンディングの各種リターン、報告書やポストカード、記念グッズなどをできたものからお送りしています。それがまだ終わりきってはいないし、このイベントを含めて第3回に向けた活動は途切れずに続いています。

今期中にNPO法人化しようと思っているので、会計もばちっと締めたというよりは4月末時点のお金の動きというものです。どこを年度で切るかは、また法人を作るときに決めますが、やっぱり展示会場や設営、運送費で50万近くかかるわけです。今回はWebサイトの立ち上げやこのメンバーの人件費を含めているのでこれが毎年かかるわけではないんですが、まとまった資金が必要だということで助成金やクラウドファンディングでご支援いただきました。案外大きいのが、マザーハウスの便りに同封していただく形で800名の方に募集案内を送ったので郵送費とかも馬鹿にならない。このような形で合計300万円くらいこれまで費用がかかっています。今、多少繰り越しはあるんですが、この第3回含めて今後の活動に向けてあり余ってるわけではないので、引き続きファンドレイズを頑張っていかねばと思っています。

これからの活動について「未来会議」ということで、改めて僕たちは何をやっていくか。もちろん第3回刑務所アート展をやるんですけど、やることが目的ではなくそれがどこに向かってなのか。この「『壁』を越え、『はじまり』をつくり続ける」というのが、僕らが考えたり判断したりするうえでのよりどころになると思っています。

壁って、いろいろありますよね。刑務所内外を隔てる物理的な壁だけでなくて先ほどの郵送物の話や、あと会場でも展示しましたが刑務所の中で使える道具って限られてるんですよ。それがそもそも表現を規定するし、影響するわけじゃないですか。そのような制度的な壁。あと、今回も郵送でフィードバックシートをお送りしたんですが、対話や交流も制度的に制限されているわけです。面会か手紙なんですよね。そのような物理的・制度的な壁も手伝って、やっぱり犯罪や受刑者に対する心理的な壁や、あるいはそもそも知ることができない・難しいという情報の欠如、Connections・繋がりが欠如している。そのようなものが対話あるいは表現を隔てる壁としてあります。

この壁を越えて「はじまり」を作る。はじまりとは何かというのは、何かを表現する、作品を作るのは受刑者だけじゃなくて、僕たち1人1人も表現する経験というのは始まりじゃないですか。新しい自分を発見したりこれまで形にできなかったものを形にしたり、あるいはそれに対して応答・レスポンスが返ってくる経験は「はじまり」です。

この活動でいうと、受刑者や刑務所というものをあまり知らない・関係ない、遠いなと思う人が、さっき風間さんが偶然の出会いを話してくれたように実は身近にいる、繋がってるんだと知ったり出会ったり。今回は出所していない受刑者がほとんどですから、作品を媒体としてになりますが作品を通して考えに触れたり、あるいは作品を作った受刑者たちも表現物や表現を通してお互い少し変わったり、考えたりした経験が1人1人に、僕も含めてあったと思うんです。それってはじまりだなと思います。このはじまりをいかに作っていくか。アートはその始まりを作る手段になり得るんじゃないかと思っています。よりどころになる言葉・文章を残すことができたらと思って自分で書いたものですが、このコンセプトを大事にしたいです。

当面は刑務所アート展が活動のメインになるんですが、何のためにやるかというと私たちを隔てるいろんな壁があって、そもそも「こんな壁がこういうところにあったんだ」と知ったり「その壁ってなぜあって、それがなぜ残ってるんだっけ」ということを明らかにするような調査研究の必要性もあります。壁を越えていくための色々な方法、アートを提案して実行したり、今日もみなさんが来てくれましたけども繋がりを作っていくことが壁を越えていくうえで大事だと思っています。

その活動の中で、受刑者だけでなく僕も含めて今日来てくれたみなさんや展示に来てくれた1人1人と、何かしらはじまりが生まれるといいなと思っています。はじまりというのは別に作為してこうすればはじまりますというものでもなく、芸術はうまくいったりいかなかったりするものなんですけど、でも少しでも何かはじまりのきっかけとなるようなことを意識した場づくりや、さっきアクセシビリティの話もしましたがいろいろな人がちゃんとアクセスして体験し、対話できるような環境を作るのもとても大事だと思います。この壁とはじまり、ここに僕らは繋がってるんだっけというのを迷ったときに立ち返るよりどころにしたいなと思っています。来てくれた人も本当にいろんなアイデアを出してくれました。「こういうことを一緒にやりたいね」とみんな言ってくれて、「いいねいいね」とみんなで盛り上がりました。

まぁ、まず今年度は第3回刑務所アート展の企画運営ですね。やっぱり同じ時期、3月に東京でと思っていますがもちろんやります。今年と全く同じことをやるわけでなく、実施するごとに進化させていきたいと思ってるんですが、裾野を広げたいです。今回、マザーハウスの協力で800人くらいの方に募集案内を送ることができて、50数名からのエントリーがありました。我々の人数も限られていますが、少しずつ各地の刑務所や、あるいはマザーハウス以外の支援団体の皆さんにご挨拶に行って「募集案内を送って配っていただけませんか」と相談したり、そのような関係作りをしたいです。去年は800人くらいにご案内ができたので、それを例えば1000人くらいに増やせたらいいな、と。案内の母数を増やすと参加者も増えていくと思います。

もう1つ、表現の幅を広げる取り組みとして、受刑者宛の募集案内をもうちょっと良くしたいなと思っています。去年出したのはこのような感じで、テキストで企画趣旨やジャンルなどを説明しています。アートや表現には抽象や具体など本当にいろんなものがあるんですが、やっぱり1度刑務所の中に入ると本を読むか、少し面会するか、文通するかなど、インプットの機会がそもそも限られてるんですね。それと、自分の思いを表現する手段って実はいろいろとあるけれど、いわゆる「絵や書道ってこうじゃなきゃいけない」と本人が思っていて他の引き出しを持っていなかったら、実は別の表現手段に出会えたらその人はよりその人らしくより表現できるかもしれない。けれども、引き出しを増やす機会が現状ではやっぱり少ないと思っています。我々も日頃から自由に交流できるわけじゃないけど、だからこそ、この1回の募集案内でどれだけその受刑者1人1人の想像力をエンパワーできないかと思います。

具体的に、さっきお見せしたのはA4・白黒・ペライチだったんですが、A3・裏表印刷で折って4ページ・カラーで「絵画や書道といっても結構いろんなものがあるよ」と画像で作品の例を提示したい。「こうあるべき」と規定するんじゃなくて「これもあるよ、こんなんでもいいよ」というのをお見せするように、募集案内がちょっとした参考資料にもなるように作りたいなと思っています。その中身を今、運営メンバーでちょっと話し合っているところです。このようなことが、ただ第3回をやるにしてもステップアップできることかなと思っています。

あとは他の地域での開催モデルづくりということで、今ご相談中でご迷惑をかけていけないから名前を伏せますが、2つの県からちょっとやってみたいとご相談いただいていて、補助金や助成金の申請を含めて一緒に相談しています。第1回と第2回の作品を僕らは保管しているんですが、その地域のやりたい方と相談しながら、テーマや使える会場の広さ・環境を含めて、お送りする・お貸し出しする作品の選定・キュレーションや展示設営での注意点など、そのあたりを今年実現する地域でモデルを作れたら、と。費用や人・ものなど概ねこのあたりは共通で大事にしていただいたり、ご用意していただいて。映画の自主上映会ってあるじゃないですか、あれと同じように一定の枠組みを作れたら東京以外でも広げていけるかなと思っています。

あと日頃から、今日がその始まりだと思っているんですが、毎月1回くらいはオンラインでの勉強会やトークイベント、ワークショップなどをできたらなというのと、メルマガや記事、YouTubeなどのコンテンツで情報発信していったりアーカイブしたり。そしてやっぱり続けていくための運営体制作りとして、助成金や物販・寄付でのファンドレイズ、法人格をとったりと、あれこれ足元を整えることをやろうと思っています。

ずっと喋っちゃいましたが、資料も再度お見せして、あと30分ぐらいは自由懇談も含めて時間を取りたいと思っています。

去年クラウドファンディングで集めたお金もあって、多少残りのお金があるんですが、ただ第3回のアート展とカタログや募集案内、その他を含めるとやっぱり通年で300万円以上は必要だなと思っています。今、助成金で申請できるところは申請していって、あとカタログも出来上がったので、メンバーが興味持ってくれる方にご紹介して買っていただいたりと、色々と動いています。

けれども、非常にストレートなお願いなんですが、カタログがオンラインでご購入いただけますので、もしよければお買い求めください。委託販売も7掛けで受け付けておりますので、書店やカフェなどお店を持っている方はご連絡ください。

ついさっき審査が通って公開できたんですが、SyncableというWebでクレジットカードなどで決済できて、単発でも金額によっては月額継続引き落としもできるプラットフォームがございます。もしよろしければ余裕のある範囲で構いませんので、ご寄付もいただけるとありがたいです。

あとは毎週メンバーでミーティングをしつつ、いろいろとやることがいっぱいあって頑張ってるんですが、文字起こしや記事執筆、資料作成などをプロボノ的にお手伝いできる・したいという方は問い合わせフォームからご連絡いただけると嬉しいです。あと「自分はこういう団体でこういう活動をやっているんだけど、こんなふうにコラボできないかな」など企画の持ち込み・提案なども大歓迎です。会期中にもいろんな方からアイディアをいただいて、すごくわくわくしています。

「支援をお願いします」と言いつつ、ここからはちょっと自由に、ここまで私たちが話したことの感想やご質問でもいいですし、こういうことをやってみたい・一緒にやりたいなど何でもオープンマイク的に、9時くらいまでやれたらなと思っています。チャットでもマイクでも、ビデオのオン・オフもみなさんが参加しやすい形でやりましょう。

ひとまず報告パートは終わりです、ありがとうございました。スライドもWebにアップしていますし、今日のこの録画をそのまま後でYouTubeにもあげます。途中からの方も後でごゆっくり楽しんでいただければと思います。ありがとうございました。

黒木:Aさんが手を挙げてくださってます。

参加者A:どうも、Aと申します。途中からの視聴で前半が見れていないのですが、刑務所アート展はすごくいい取り組みだなと思います。

生活保護というセーフティーネットもあるんですが、子供たちや、特に若者にとっては最後のセーフティーネットが刑務所、というか刑事施設なんです。だから、もう少し刑務所が、刑務所というより入所している子たち、大人もそうだけど、私たち娑婆にいる人間というのがフラットになっていければいいなと思っています。「人を殺しました」など色々な悪いことをしているんだけどちゃんと刑務所に入って、法的には罪を償っているわけなので、誰でも生活環境によってはそこに入る可能性はあるわけで。だから、こういう取り組みをやっていただけてることにものすごく感謝して、ありがたいなと思って聞かせていただいておりました。

それで質問なんですが、案内状など漢字ばかりの日本語文なのか、あるいはひらがなバージョンもあるのか、日本語以外の中国語やポルトガル語などもあるんでしょうか。もちろん半分ボランティアでやっておられるんで大変だと思うんですが、そういうのもあればいいのかなとちょっと思ったりもします。漢字が読めない人や、外国人入所者も場所によっては多いので、半分日本人で半分中国人やイラン人というような場所もあったので、そういうものもあれば、いろんな文化も知れて楽しいなと思います。長くなりました、ありがとうございます。

鈴木:ありがとうございます。まさに、次の募集案内はやさしい日本語バージョンやルビありバージョン、あと先ほどお話しした作品の例示も含めてビジュアル要素をもう少し増やしたいなと思ってます。でも過去2回はちょっとまだ十分にできてなくて、こんな感じの文字文字しいものになってしまったので、そもそも平易な表現にするというのと言語ですね。母語が日本語でない方も含めて障害がある方など、この企画の趣旨やあるいは表現したい、応募したいと思ったときのコミュニケーションの支援や翻訳には結構いろんな工夫が必要だなと思ってます。

今回はマザーハウスの協力で800名ぐらいの方、マザーハウスが日頃から文通支援をしている方に、いつもマザーハウスが送っているお便りに同封してもらう形でやったんですが、刑務所単位やいろんな支援団体と繋がると、例えば女子刑務所、あるいは外国ルーツの方が多い刑務所、あるいは知的障害がある方がいるところなど、僕らがアプローチする先が広がるにつれて、当然そのようなコミュニケーションの翻訳や支援が必要な方との接点は増えていくでしょうから、そこはやっぱりやっていかないとなと思っています。

風間さん、もし追加でコメントあればお願いします。

風間:そうですね、やさしい日本語バージョンは必要かと思います。今回、たまたまですがブラジルの方からの作品の応募がありました。それから一応女性刑務所からもお1人応募があった、という状況ですが、ともかくもっと応募者層、募集案内を送る層を広げるのが目下の課題です。

それから、刑務所アート展では基本的に犯罪に関して何をした人かはわからない形になっています。本人がエッセイの中で自分がしてしまったことを書いていればそこでわかるわけですが、再犯防止を掲げてやっているわけでもなく行政が主導でやる展示ではないからこそ、各々が本当に自由に表現を出してくるわけですよね。そうすると、いろんな側面が見えるわけですね。

刑務所と社会の関係性を考えたいので「刑務所アート展」と打ち出してますけれども、刑務所に入った瞬間にもう「受刑者」としか見えなくなってしまうその人の姿を、この人お子さんいるんだ、お父さんなんだとわかったり、その人の持っている多様な側面が見える、そのコミュニケーションの方法がまさに表現だろうと思います。

そして、これまでずっと自分の部屋でノートに書き溜めることはできるんだけど、人に見てもらえる機会がないというのが、僕が調査してわかったようなことだったんですよね。そうすると、やっぱり表現が変わるんです。誰か外の人が見ると思うと変わる。だから、先ほど紹介したような仕方で「書いてみたけど、自分で出来上がったものを見て、何か違うような気がしてきて、ちょっとこれは応募を見送りました」と、作品は届かないんだけど取り組んでみたことを伝えたくて送ってくれたこともあって。そうすると、表現してみて自分の新たな側面に気づく。そのプラスの中では見つけ得なかった自分の側面、それはどこにでも言えることなんですね。ずっと家族の中にこもってたら自分は息子としての役割、乃至そういう役割しか見えてこないけれども、 違う人に自分を表現しようと思ったら違う自分の姿が見えるという仕方がある。そういうことができるのが、アートの特殊なコミュニケーションかなと思ってやっている感じです。ありがとうございます。

ついつい喋りすぎてしまうので、どんどん話してもらうのがいいですね。Aさん、よろしいでしょうか。

参加者A:ありがとうございます。

刑務所の中にいるとどうしても、というか入所者はほぼほぼ自尊心が低い人なので、こういうアートなどを通じて人から認められる手段を作っていただけるのは、ありがたいなと思います。

風間:ありがとうございます。

風間: では、Bさん。

参加者B:ありがとうございます。質問なんですけど、今回応募があった作品を、例えば800人の繋がってる方々に「今回こういう作品の応募があって、展示しました」ということは応募された方に送ったりはされたんですか。というのも、他の人の作品を見る機会というのも大事かなと思ったのと、あとやっぱり案内を受け取って応募はしなかったけど「表現することに興味はあるけれども、どういうふうにやったらいいのかわからない」「こういう考えや表現が認められるのかわからない」と考えている方々もいるんじゃないかなと思ったんです。他の人の作品を見せる機会はあったのかなと思いました。

風間:はい、ありがとうございます。第1回刑務所アート展のときは、マザーハウスという団体が全800名の受刑者の会員に月1で出している会報誌にその報告を載せていたので、そのときには他の人の作品や「こんなふうに言って展示されたんだ」ということは応募していない人にも伝わったと思うんですが、今回の第2回刑務所アート展では今のところ応募者にフィードバックすることに僕が手一杯になってしまっている状態ですが、会報誌に載せてまた報告を出せると思います。あるいは募集案内を出すときにも「昨年はこんな展示でした」という仕方でも報告できると思います。

おっしゃっていただいた通り、表現を喚起するクリエイティブな刺激があることが大事だと思っておりまして、今日ご参加のみなさんからもアイディアをいただきたいポイントの1つはどうやったら多様な表現が集められるだろうということなんです。というのも、通常でも絵を送ってください、エッセイを送ってくださいと言われたら緊張しちゃうじゃないですか。うまく書かなきゃ、感動するような何かを書かなきゃと、つい張り切ってしまう。いいことなんですが、ただ自分で高い目標を設定しちゃうために送れないなど、ちらほら聞きました。弁護士さん経由で、自分の文通してる相手も何か送ろうとしたらしいけど「自分の作品なんか応募に値しないかも」と遠慮しちゃったと聞いたので、そこのハードルを下げたい。どんなことだっていいんだよ、というか「こんなのも送っていいんだ」くらい。それこそ応募を見送って作品を送ってこないやつもあるけどそれでもいいんだ、みたいな。応募するハードルをすごく下げて、面白いことを発見したい。カタログを買って見ていただけたらわかるんですけども、今回フォント部門を作ったんです。というのは、受刑者の方の手書きの文字というのは非常に魅力があると僕は思っていて。でも、「フォント」ってどう説明していいのかわからないんですよ、意外と難しいですよね。「フォントって何ですか」みたいな。「字体」とか色々な表現があり得たんだけどそれが難しくて伝わらず、フォント部門に応募してくださった方の作品はまあまあ、と。それ以外の、フォント部門に応募してきてない人の人の方がやっぱりめっちゃ魅力的で、哲学対話のライラ・カセムさんは見逃さず発見して、「この人がフォント賞受賞じゃない?」というような仕方で魅力を発見して、それで賞を送ることができたんです。要は「あなたの魅力はここですよ」みたいに、人と出会うことで発見される。自分では気付かない自分の魅力みたいなものを、別の人の視点が入ることで発見されるというコミュニケーションはすごく面白かったです。

だいぶ話が逸れてしまった可能性があるんですが、とにかく今回応募してくださらなかった、あるいは応募しようと思ったけどちょっと遠慮しちゃったみたいな人に向けて、とにかく表現を喚起するような方法をちょっと模索したいところです。

参加者B:ありがとうございます。

日本の刑務所の図書館はあまり充実してないというのを調べてみて、出所したときのアンケートで「本を選ぶ時間が少なかった、種類が充実していなかった」という回答がすごく多いというのを見たので、図鑑や有名な絵画を見る機会や、あと詩などの作品を見る機会を提供すること、受刑者の方の興味を知ることからコミュニケーションを取っていく方法もあって、そういう方が「自分は表現できない」と思っていたけどできるようになっていく、そういう未来もあるのかなと思いました。

風間:ありがとうございます。

鈴木:今回、コメントと一緒にカタログも1冊ずつ応募者には、事後ではありますが送りました。あとはやっぱり続けていくことで、刑務所の中の受刑者内の噂話や、あるいは刑務所に1件ずつ問い合わせしたり訪問したりして刑務官の方と仲良くなって、協力的な刑務所が増えていけば、刑務所の中の図書館に我々のカタログを置いてもらうこともできるかもしれない。募集案内も、今回マザーハウスの協力で支援団体経由で文通を通してでしたが、刑務所単位で応募のビラを所内に貼ってもらったり、できるかは分かりませんが。

刑務所アート展というものを知ってもらうために、続ければ続けるほどたぶん知ってくれる人も増えるし、続ける中で毎年1つでも2つでも、刑務所や支援団体や本人との繋がりが、今回はマザーハウスという1団体の協力で800人ですが、それが今年もう少し増やせて、というのをやりたいなと思っています。

やっぱり、限られていますよね。年に1回の募集案内をどれだけクリエイティブに、かつユニバーサルにわかりやすくするかというところです。だからそろそろ、夏ごろには発送できたらなと思っているので仕上げていかなきゃいけないんですが。

今回Zoomを開きましたが、これから毎月メルマガやZoomでこのように近況報告をしてみなさんに揉んでもらったり、ちょっと手伝ってもらったりしながらやれたらと思います。ドラフトが出来上がったらそれも見てもらえたらと思います。

黒木:お2人、手を挙げてくださっています。

鈴木:では順番に、Cさんにマイクをお渡しします。

参加者C:携帯から参加していて画像を出すのが面倒なので、音声だけで少しお話させてもらいます。

今回、刑務所アート展に実際にも行かせてもらいましたし、ボランティアというか少しお手伝いもさせてもらって、ありがとうございました。本当に勉強になりましたし、とてもいろいろと考えることが多かったので、すごく参加して良かったです。

質問だけに絞りますが、刑務所アート展の今回の活動をいろいろと見たときに、途中で法務局かどこかがネットでまとめていたのですが、各刑務所などではいわゆるクラブ活動のようなものがあって、場合によっては書道の先生が刑務所の中に入って教えたり、そういう活動があるんだなとを知りました。各刑務所で結構いろんな活動をやっているんだなと知ったときに、ある意味では私たちよりも先に「塀の内と外」を実はその人たちってある意味では乗り越えているというか、行き来している存在だと気がつきました。その方々に対してのアプローチ、ある意味では味方になってもらうアプローチは、今何かしておられますでしょうか・もしくは今後していくなど、予定や考えがありますか。

風間:クラブ活動が各刑務所で行われていて、外部講師と呼ばれる方々がいらっしゃるのは知っております。僕も自分の調査をしている段階で、調査対象の候補にはずっと挙げてきたんですが今のところ出会えていません。こちらがアプローチしなきゃいけないのは分かっているしもちろんアプローチするときはするんですが、こういうのはご縁でいつかひょっこり出会ったりするのかなと思いながら活動している状況です。だから、そのうちご縁があるかなという予感で生きております。

でも、確かに第1回刑務所アート展のときにはいました。少年院で表現活動の指導をやっていますという方が来てくださったような気がしております。そのような出会いを大事に、協力を得られたら得ていくような仕方がいいかなと思っております。

参加者C:なるほど、わかりました。今回の刑務所アート展、第2回も面白かったんですが、去年の作品も見ていたんです。今回の作品を見たときに思ったのですが、予想よりも作品数がちょっと少ないかもと正直思ったところがありました。様々な事情でもしかしたら作品の集まりが少し鈍ってしまったのかな、それは結構もったいないことだなと思いました。

けれども刑務所の数が何個くらいかわかりませんけども、50~60と考えても29の施設から返答があったということを考えれば、刑務所側としてはこういう活動をそんなに悪く考えているとはちょっと思えないんですよね。だから、やっぱり刑務所の中でのクラブ活動をやっている、表現活動を支援してる人たちにアプローチがうまくできればいい突破口が見つかるのかなと思った次第です。以上です。

鈴木:ありがとうございます。続ける中でご縁で出会うのもあるんですが、先ほどもありましたが、刑務所や支援団体はある程度リストアップして、あとは人手や時間の問題で順番にご連絡すれば、新たに協力してくれる人は当然いると思うので、そのあたりも、クラウドファンディングや応募者へのフィードバックで4月5月はドタバタしてたんですが、この6月から、夏頃に募集案内をするのでそれまでに、6月7月に分担して、手伝ってくれる方にもちょっと手伝っていただきながら、「こういうものですけどちょっとご一緒しませんか」ということはやりたいと思っています。

参加者C:もしお手伝いできることがあればしたいなと思いますので、よろしくお願いします。

鈴木:続いて、和歌山からですかね。

参加者D:質問と提案です。お話を聞かせていただいてありがとうございます。久々にマザーハウスという名前を聞いたので、ふとIくんのことを思い出しました。
まず質問なんですが、応募作品の中に形を作るようなものはあるんですか。造形物ですね。

鈴木:彫刻や粘土ですね。

風間:国内ではないですね。国内でないというか、外に出せないんじゃないかな。ごめんなさい、名指ししてしまうんですが風水さんならわかるかもしれないです。でも、今のところ届かないです。彫刻みたいなものはないと思います。海外ではたくさんあるし、作品を見たこともあるんですが、日本ではないですよね。風水さんごめんなさい、急に話を振るんですが。

岩崎風水(以下、岩崎):彫刻刀がそもそも危険物なので。折り紙すらなかなか難しいので、立体造形って結構難しいんです。でも、風間さんに提案したのは、立体の設計図を作って送れば組み立ては外部の人ができるという、建築科1~2年の大学生がやるような課題で受刑者はすごいものを作れるんじゃないかと。

風間:そうでしたね。Dさん、いかがですか。

参加者D:彫刻刀の話もありましたが、造形ということなので今は3Dプリンターもあるじゃないですか。だから3Dデータを作ってもらうようなことができないかなと、それを出してもらってプリントアウトして作るという。

なぜ考えたかというと、視覚障害のある人にとっては触ることで物の形がわかる。点字などもありますが、そういう形。もう1つは、外国ではできるけれど日本ではできないという壁みたいなもの、当然物を作ると投げたりという危険があると思うんですが、そういう壁を少しなくしていくようなことに繋がらないかなと思ったからです。形あるものは触れますから、例えばお手玉であっても、もし柔らかいものだったらいいんですかとか、そういう交渉をしていけないか、というのが1点でした。

提案になってしまいますが、職業訓練でCADなど使うところが出てきているのであれば、そういうことも可能かなと思います。そういう時代に多分なっていくし、刑務所自体もこれから拘禁刑という形のものに変わっていく中で、少し自分たちも働きかけていってみたらいいんじゃないかなと思いました。

それとまた提案なんですが、刑務所の中には結構(1:30:16)がいて、刑務所の中のラジオというのがあるんです。和歌山でも実際に我々のメンバーがラジオ放送局を流してますし、仙台などの放送局のメンバーもいるんですけど、そういうラジオを通じて音楽のリクエストなどができることもあります。そういうところで刑務所アート展をPRしてみたらどうか、と。

それとコロナ禍が明けたので必ず動き出すのが矯正展ですよね。矯正展で、実際にあそこは(1:30:45)製品などを売ったりするんですが、あえてこのような展示を少しそこでやってもらえませんかという働きかけができないかなと思います。

実際に、我々のメンバーも刑務所に行ったりするんですが、この頃高齢者支援ということで高齢者と一緒に何かをするということがあって、そこでは実際折り紙をやったりしています。だからそういうのが持ち出せないのか、これを作品として矯正展に出しませんかという形で話をもっていくと、案外ハードルが低くなってくるんじゃないかなと思いました。

あともう1つは書道ということですが、書道はさっき言った「フォント部門」になるんですか。

風間:いえ、書には書道部門があります。フォント部門は手書きの、書道の道具もみんながみんな使えるわけじゃないから、大半は手紙の便箋に書ける文字になってしまうので、硬筆の、鉛筆の文字の方ですね。

参加者D:毛筆もいけるんですか。

風間:毛筆も、書道部門に作品は届いています。

参加者D:というのも、今年3月に日本はUNESCO本部に書道の無形文化遺産登録の申請をしたと思うんですね。早ければ令和8年の11月くらいに決定すると思うんですが、今の日本の書道では結構そういう盛り上がりがあって。書道を世界無形文化遺産にしたい。特に「光る君へ」などでもひらがな・カタカナ・漢字というのは、字の綺麗さということをやっていると思います。

さっきチラシを作ると言っていましたが、そういう方向からの刺激で提案していったらどうでしょう。あなた方の活動が書道の無形文化財登録を後押しするんですよ、という有用感みたいなものもあったらいいかなと思います。

次は私も感じているんですが、再犯防止・更生保護をあんまり打ち出すと、本来の趣旨が全然なくなってしまうと思うんです。その言葉を出すことで壁を作っていくことになると思うんですが、ここには資金がたくさんあるんですね。再犯防止に関しての基金や更生保護に対する基金がある。そういうのをうまく活用していきながら、毒を消していきながら、こういうアート展をどういうふうにできたらいいのかなと。

さっき全国で2ヶ所と言われましたが、そのうちの1ヶ所として和歌山で。実際、無知と偏見をなくしていきたいと考えたときに、アートというのは本当にずっと素晴らしいものだなと思っていました。昔からそういうことを考えてきたので、まさしく同じようなことをされてるということがあって。当然「一日の長」というのがありますから、我々よりは当然そういうふうなことに詳しいし精通されてると思うんで、そういうところと一緒にコネクションすることによって、さらに展開を広げていけたらなと思っています。

ぜひこういう形で、刑務所に対するコネクション、社会に対するコネクション、そしてもう1つ刑務所に外国の人も多いと言われていますが、おそらく日本の人口が今から減っていってもの作りなどで外国の人が特定技能という形でこれからどんどん入ってくると思うんです。そうなると犯罪も起こるんですが、あえて刑務所の中でもいろんな国の人がいるというのはその通りなんです。そのこと自体がある程度インターナショナルな要素も持っていて、外国の人たちがどういうものを作るのかという形の中で芸術を交流させることによって、ある面、世界で起こってる紛争などに対しての無知と偏見をなくしていくきっかけにもなるんじゃないかなと思います。ぜひそういう視点での仕掛けも考えていただけたらと。

更生保護の分野でも、オランダのハーグで4月17日に「国際更生保護ボランティアの日」を制定したんです。こういう活動に参加してる人たちの、世界的なボランティアの記念日・集約する日ということで制定しましょうということで、日本が提案して実際採択された日です。そういう形で、日本がもっている「人を尊ぶと」いう素晴らしい文化をぜひアートを通じて、そしてその結果「刑務所の中」というんじゃなくて「空は繋がっている」ということで、刑務所であっても、外であっても中であっても、社会の中で起こってることだから全て社会で抱え込んでいく、インクルージョン、インクルーシブな世界の中で物事をやっていくんだというところにも、みんなのちょっとした気づき、社会について考えてほしいなと思うので、このようなZoomを使ってセッションをこれからも定期的に開催していただければ、そこからコネクトが広がっていくのかなと思っています。

和歌山で取り組むのはアートと、もう一つはゴミ拾い。「クリーン&コネクト」というゴミ拾いを通じてコネクトしていく形で、これも不思議と人が集まってくるところがあるので、参考までにですが。ぜひこの活動がさらに広がっていってもらえると、11月に和歌山で「紀ノ国文化月間」という、文化の月にあえて文化として、芸術としての提案としてこのアート展がができればということで、県立図書館を今借りる予定になってますし、そのあとメディア・アートホールで映画の上映などして。このような形での映画「フクロウ人形の秘密」という、非常にこれとよく似たような展開をしている児童向けの映画ですが、上映をして監督の高木さんにも来てもらって話ができたらいいなとを今考えています。ぜひそれも実現をしていきたいと思います。どうか全国の皆さん、よろしくお願いいたします。こういうことが広がっていったら、本当に楽しいなと思うのでどうかよろしくお願いします。以上です。

鈴木:ぜひ今年は和歌山でご一緒できればと思います。ありがとうございます。

鈴木:手を挙げてくださっている、Eさんに話を。

参加者E:みなさんお疲れ様です、こんばんは。風間さんや悠平さん、萌さんとはマザーハウスの仕事を通じて友人知人という関係で。風間さん、大変お久しぶりでございます。

感想に近いんですけれども、ちょっとコメント欄にも書いたんですが、今回第2回刑務所アート展について新聞記事にまとめられたと思うんですけれども、その記事を私のパートナーである夫に「ちょっと読んでみて」としてシェアして、それによって「こういう活動があるんだね」と知ってもらえたんですね。でも、こういう言い方をするとちょっと語弊があるかもしれないんですが、普通に生きてる人、刑務所と関係のない場で普通に生活をしている人が刑務所アート展に果たして関心をもつのかって大きな問題だと思うんです。

刑務所アート展ってすごく意義のあるものだと、私も今回の活動を通じてすごく思ったんですが、普通に生活していて「刑務所と接点がないな」という人がいかに認知してもらうか、無知と偏見をなくしていくか。先ほどDさんもおっしゃったことかと思うんですけれども、無知と偏見をなくしていくのはすごく必要なことだと思うんですけども認知の拡大について、例えば団体さん・法人さんなどそういう方たちと連携したり、具体的にコラボレーションしたり、そういうことが今具体的に進んでいたりするのかとお伺いしたかったです。

鈴木:はい、ありがとうございます。さっき風間さんが、撤去作業しているときに偶然来た宅配の方が「これ何?」と、実は…という話がありましたが、元受刑者やその家族は普通に暮らしてる中に全然いるわけですよね。だからまず、第一に活動を続けること。あと、さっき新聞記事をシェアしてくれて、パートナーさんが読んでくれたと言っていましたが、自分たちのWebサイトやカタログで自分たちで残せるものは、とにかくちゃんとアーカイブし続ける。これも録画してYouTubeに上げます。

あとは、この間新聞やその他いくつかメディアで書いてくれましたが、他の人たちが他の媒体や自分のSNSで書いてくれることも、Dさんが今動いてくださってるように他の地域でやったり、とにかく広がりやすくなるための元として、我々がちゃんとコンセプトを言語化したりアーカイブしたりすることかと思っています。

あとは、今回クラウドファンディングの支援者の返礼品としてプロトタイプで作ったんですが、応募者の絵画などものによっては例えばマグカップやポストカードなどグッズ化して、「刑務所アート展」という展示のたてつけがなくても気づいたら手に取るようなものになりうるもの。そういうものばかりではないし、そうでなきゃいけないわけじゃないけど、商品化などあの手この手で作っていく・残していく・広げていく、という積み重ねかなと思います。

あとは、映画などいろんなものがありますよね。それをちょっとずつPACの記事などで、PAC以外の支援団体の活動やそういう映画、いくつかこういうのありますよとキュレーションのようなこともできるかもなと。現状では手が足りてないので、手伝ってくれる人がいたら一緒にやりましょうという感じなんですが、その辺の繰り返し、積み重ねかなと思っています。

でも、その1つとしてEさんがパートナーさんに新聞をシェアしてくれた、そういうことがいろんなところで…と思っています。ありがとうございます。

風間:「偶然出会っちゃう」を積み重ねていくことの方が大きいんだと思います。今のこの時代、「刑務所」なんていう検索キーワードを普段入れないような人に出会わせるのは難しいし、片やそれに強い専門家たち、弁護士さんなり刑事政策の研究者たちなり、そういう人たちで閉じられてしまっているものをむしろ広げる方法が、こういうアート展のような仕方だと思うんですね。あるいはマスコミやネットでしか入ってこないような刑務所の情報とは違う仕方で、展示には伝えられるものがたくさんあると思うので、もちろん広報は広報で頑張るんですが、もう人数ではなくてたった1人でも。

僕だって、その永山さんの展示をたまたま見てしまったからこんな活動に至ってしまってるところがある。だから、そのたった1人でも、偶然出会ってしまってはまってしまって、ということも大きいんです。もちろんハマらなくてもいい。その日1日刑務所のことを考えちゃったわ、という人が増えることがすごく大事かなと思います。

BUoYは本当に面白かったですね。色とりどりのクリームソーダを頼んだ女の子3人がコソコソ「どうする?」って言っているのを、かずえさんがささっと「どうですか、見ませんか」と声をかけたら入ってくれたわけですよ、インスタ映えのしない世界に。さっと言ってくれたのはすごく大きかったので、それが大事な気がします。もちろん増えてくれたら嬉しいんですよ。たくさんの人に知ってもらったら嬉しいんだけど、こういうのは偶然というか、そういうものに委ねるのも大事かなと思ったりします。

鈴木:その手立て、元にはちゃんとこだわって作って残していくことだと思います。

黒木:ちょっと喋ってもいいですか。

鈴木:まだ何人か書き込んだり、手挙げてくれた人もいるので、萌さんも喋ってもらってですが、オープンエンドで眠いな、疲れたなという方は自由退室で。ただ全て録画は残すのでご安心ください。いる限り話したり書き込みを拾ったりしたいと思います。

黒木:大した中身じゃないですが、Eさんが言ってくださったこと、どうやって関心をもってもらうかというのはすごく大事なテーマだと思っています。一つ、和歌山での話もさっき出ていましたけど、地方での開催というのも、東京でやって東京の人たちが足を運んでくれて、実際に触れてもらって感じてもらうというのが東京で1つあるのと、地方には、和歌山には和歌山のカラーなり歴史なりがあって、そこでの刑務所アート展、Prison Arts Connectionsとのコラボなど独自のものがまた生まれるかもしれない。地方での開催をとても楽しみにしています。

ダイレクトに実際にその現場に来てもらって作品に触れること、運営メンバーと触れてもらって「この人はこんなこと考えてたんだ」と知ってもらうこと。この5人の運営メンバーだけど、実際に知ってもらうきっかけになると思うので、そういうのを大事にしたいなと思います。

あと、ちょっと脈絡がないんですが、私はずっとPACに関わりながら、葛藤しながら関わってきたんですけど、1つ最近答えが見つかったなというのがあって。

他の人にとっては当然のことなのかもしれないけど、人には人権というものがあるということ。私は子供のこと、児童福祉にとても興味があるので、子供の権利などを学ぶときに、みんな、あなたにも私にも人権があって、自分の嫌いな人にもあるのが人権だという話をいろんなところで聞いて、それがすごくストンと腑に落ちたというか。すごく葛藤するし、加害・被害が発生したときにすごく葛藤するけれども、それでもやっぱり相手にもお互いの人権があるんだというところがすごく自分の疑問への解答の1つだったのでシェアしました。

参加者E:ちょっとだけ話してもいいですか。悠平さんや萌さん、特に悠平さんですがこのPACの活動を随時Facebookなどでシェアしてくださると思うんですが、それをシェアする自分の手が止まるというか。何となく「シェアした自分っていうのはどう見られるんだろう」とかそういうことを考えてしまうんですね。「この人は刑務所アート展を急にシェアしたけど、どうしたんだろう、と思われるのかな」とか、それを自分の中でうまく言語化できて、例えばこういう理由で刑務所アート展に興味があって、もしお手伝いする機会があったら「今ちょっとお手伝いしています」と書くことができたらいいかもしれないですが、自分の中で言語化して整理できたら、もしかしたらシェアのボタンを押すことができるかもしれないな、と思いました。

鈴木:ありがとうございます。それも含めて1人1人のタイミング、言葉や手が動く・生まれるときがあるなと。それもさっきのコンセプトに掲げた「はじまり」というか。

はじまりのタイミングって「みんなこの瞬間、今月シェアしてください」という話ではないと僕は思いました。

それもみんな、Eさんが今自分の経験を話してくれたように、Facebookのシェアボタンを押すときにちょっとためらいがあったけど、パートナーに新聞記事をシェアしたなど、そういうのはみんな1人1人あると思うんですよ。コミュニケーションの方法やタイミング、回路など、それも含めてはじまりだと思っています。

Fさんからコメントいただいています。「刑務所を出た後の保護観察中・執行猶予中の方もアートが身近になるといいと思うんですが、出所後は参加不可ですか」。不可ではないです、実際第2回に関しては風間さんと繋がりがあって、我々が能動的に募集案内を送ったにはマザーハウスを通じて刑務所にいる受刑者の方にだったんですが、それ以外の人の参加を不可としているわけではなく、出所した方2名から風間さんのもとに作品が送られてきたのでそれも展示しました。

難しいですよね。さっき「受刑者アート」じゃなくて「刑務所アート」と掲げていると話しましたが、だから当然そういう人たちの表現もあるし、来てほしいなと思っています。

例えば、どっちにしろ第3回の募集案内を、みなさんにアドバイスいただいたいろんな工夫をして、なるべく多くの受刑者の方になるべく伝わりやすい案内を出します。まずそこにたぶん時間や労力は優先的に使うんですが、募集案内のデータはWebにアップしちゃってもいいなと思っています。例えばFさんがたまたま知り合いの執行猶予中・保護観察中の方に渡してもらって、その人が応募したいとなったら受け付けるのも全然ありだと思う。

続けていくにつれて、限られた展示空間でどのように展示設計するのかなどスペースの問題はいずれ出てくるんですが、またマンパワーの制約もあるし、当面はたぶん僕らが能動的に積極的にはまだ十分にアプローチしきれてない受刑者の人たちへの発信に力を入れていきたいです。でもこうやって、偶然出会ったり繋がったりして、服役中の方以外の出会いやあるいはご紹介・ご相談いただいて作品を受け付けることは全然あると思っています。

参加者F:ありがとうございます。私の母親は実は刑務所に入っていたことがあります。私は黒木さんの友達で、刑務所アート展のことを黒木さんからシェアされたんですが、私としては母のことを受け入れきれてないところがあったので、普通に友人が活動している内容としてちょっと遠巻きに見てたし、悠平さんのことも知っているので応援はしていたしクラファンでも支援したんですけど、実はちょっとどうしていいかわからない気持ちがありつつでした。宮崎に彼女が冊子を持ってきてくれて、現地には行けてないけど冊子を見てたらすごく身近に感じられて、10年以上前の私の母の受刑経験が、すごく時間が経って今溶けていっているなというのは、萌さんから受け取ってうちに帰って見た後に感じた感覚です。今、岩崎さんの「獄中者の家族と友人の会」という名前を見ていて、たぶん中の方たちもだし、あんまり関係ないと思われる人たちもだし、家族親戚・被害者の方たちにとっても大きいものなんだろうなとすごく感じています。また忘れ去った頃に萌さんから「今日この話があるよ」と言われて入って、岩崎さんのこのタイトルを見て「家族もいいんだな、家族も堂々としていいんだな」ということですごくリラックスしました。ありがとうございます。

刑務所を出て終わりではないというか、自分たちの人生はずっと続いていくので、まだまだ周りの人間っていろんな気持ちで生きていくと思うんですが、アートで繋がっていけたら。でも出所したら本当は繋がっちゃいけないという噂も聞くんですが、アートを通じて発表していくという繋がり方があるのかなという気がしました。

鈴木:ありがとうございます。時間ってすごく大事だと思うんです。だからこそ活動を続けること、第2回・第3回ではちょっとタイミングが合わなかったけど、第23回に応募することだってあり得るじゃないですか。

風間さんは、応募者とは違うんだけど家族当事者の方に展示中に話しかけられたというのが、第1回であったんですよね。

風間:今年も来てくださいました。ご家族の方が、自分のお子さんが入られていて、息子に応募を勧めて。最初乗り気じゃない反応だったのにあれよあれよと作品が届き、「こんなことを考えていたのね」ということを初めて知った、ということがありました。

第三者的にといいましょうか。課題部門では今回も前回も「私の大切な時間」というテーマを設けていて「そのテーマだったからかけました」という方もいたんですけど、そういうことを通じて普段知らない親の姿・子の姿、親子同士でやっていると普段気づかない姿みたいなものが表現に出ていた、とおっしゃってくださったので、役割というと大げさですけれども、そういうこともあるんだなと思いました。面と向かっては言えないけど、でもここの展示には出してくれる、ということが起きるんだなと思って。

アメリカというか英語圏の刑務所アートの活動を見ていても、いわば家族へのギフトとして贈るアートワークスみたいなものが結構あるみたいです。そのように修復まではいかないかもしれない、それはそれぞれのコミュニケーションのありようだと思いますが、表現することを諦めない、関係を続けることを諦めないという仕方で表現している活動も見ることが時折あります。それにもタイミングが本当にあると思います。今は言えない、今は関わりたくないというのが、時間の流れもあるし関係性もまちまちだし、こちらは想像するだけなんですけれどもそういうことがあるのかなと思います。

鈴木:刑務所アート展では、僕たちが募集して集まった作品ではなく、第二部で風間さんがお借りして展示したんですが、2人の死刑囚、長谷川さんと奥本さんの作品、長谷川さんの作品の下にテキスト打ち出しで、原田さん、弟さんを長 谷川さんに殺されてしまった原田さんが、書いたテキストを貼っていたんです。そういうものも今回の展示に盛り込んだんですが、家族の言葉・表現というのも刑務所アートでは生まれるなと思います。

僕たちが毎年新規で作品の呼びかけ・募集をするのとあわせて、これも企画やキュレーションの工夫、僕たちの頑張るところだなと思うんですが、今回第二部でお借りした作品を展示したように、自分たちで新たに募集して集まった作品以外、その他の団体の他の当事者の方がお持ちの作品もお借りして一緒に展示を作ることも既にやったし今後もあり得るかなと思います。その辺は回を重ねる中で変化をつけたり工夫したり、やっていきたいなと思っています。

風間:Bさんの手がずっと上がっています。

参加者B:受刑者の作品というわけじゃないんですけれども、この間行われたベネチアビエンナーレで面白い取り組みが行われてました。みなさんご存知かもしれないんですけど、チャットにURLも貼らせてもらっています。

ベネチアビエンナーレはすごく権威のある芸術祭なんですが、パビリオンの1つとして女子刑務所が採用されていて、普段刑務所と全然関係がない美術界の偉い人たちがぞろぞろ刑務所の中に入っていって、中の作品を案内するのは囚人の方々なんですね。囚人の方々は開催する何日も前から作品やアートのことを勉強したりする時間が与えられて、ということだったんですが、ちょっと面白いなと思ったのでリンクを貼らせていただきました。

さっきもちらっと言わせていただいたんですけど、自分で作るということ以外にも、他の人の作品に触れる、芸術そのものの概念を自分の中で考えてみるというのも回復に繋がるのかなと思いました。

もう1つ、ちょっと関係ないかもしれないんですけど、今私が自分で進めているプロジェクトがあります。それも大きく言うと少し似てるところもあると思うので紹介させていただきたいんですが、みなさんご存知だと思うんですけど、上野・山谷地区には博物館がすごく多いですよね。動物園もあるし、美術館もあるし、博物館もあるし。

もう1つ、路上生活者の方々もすごく多いですよね。その方々は物理的に学術とか美術・芸術に近い距離にあるのに、それらを享受できてないという現実があると思います。(2:01:04)学芸員の方々や、私も働いているんですが路上生活者支援をしている特定NPO「山友会」、と協力して、興味がある路上生活者の方々を連れて博物館ツアーをするというのを企画していて、今どれぐらいの方が参加したいと思っているかなとアウトリーチ活動で調査しているところなんですが、まだわからないですけどこの活動とPACの活動に似たところがあるのかなと思いました。

最終的には「おじさんたちと巡る上野観光ツアー」みたいな感じでちょっとした本を出せればいいなとも思っています。そしたら路上生活者とか全然知らない、関係ないと思っている人にも観光案内本として届くんじゃないかなと考えたりしています。

そんなことをちょっとお話したかったです。

鈴木:ぜひご一緒しましょう。この間問い合わせフォームで「何かお手伝いできないですか」とご連絡くださいましたね。これからよろしくお願いします。

Gさんからチャットで書き込みいただきました。展示方法なんですが、ドキュメントリサーチ的な手法を使うと飽きられるし、エンタメ的な要素を入れると危ういところにいきそうだし難しいですね。複雑な路線の1回目、すっきり見せた2回目、興味深く見させてもらいました。

2回とも来てくださってありがとうございます。回を追うごとに、今年はどんな会場でどんなコンセプトで展示をするかということと、一方で来場者も応募者もリピーターとして来てくれる・応募してくれる人がいて、でもこの瞬間、今年がはじまりだという人もいる。その中で、僕らも経験が2回なんですが、3回、5回、10回、20階とやる中で、展示もそうですけど、今日もいろいろ未来のイメージや足元の話とお話しましたがPACが全体としてどのように活動し表現していくかというのは常に考えていかなきゃなと早くも思ってます。しかしこうやって、既にこれだけの方にいろいろお声をいただいてる頼もしさもあるので、長くやっていきたいと思っています。僕らが歳をとって体力がなくなったらバトンを継いでくれる人がいるようにと思います。

風間:時折モデルにしている取り組み、まだ僕は現地行けてないので今年こそ行きたいんですが、イギリスの「Koestler Arts」という団体のディレクターの人が自分のプロジェクトを紹介するYouTube動画で「私たちはこれを60年やってます」と自信をもって言う、そのディレクターの姿があって。60年か、それはすごい、と。まだ我々は始まったばかりなんでね、ここから始めていくんだなというか。だからイギリスではもう何千と作品が集まる世界なんですね。どうやって管理しているんだと、現地視察をぜひ今後したいと思っています。

このPrison Arts Connectionsの海外とのコネクション、繋がりもグローバルに広げていけるようなプロジェクトに育っていけばいいなと思います。

Bさんが共有してくださったベネチアビエンナーレもそうですし、日本だと有名なのかどうか分からないですが、ワタリウム美術館で見たJRというアーティストは巨大な人の顔の写真を壁にたくさん貼る作家なんですが、その人はアメリカの刑務所で受刑者たちとプロジェクトをやっている作品があったり。結構アーティストが刑務所に入ってという仕方のプロジェクトは結構多くはなってるんですけれども、日本だとやっぱりそこまではまだ全然。ハードルがあります。先ほど3Dプリンターがどうのこうのとありましたが、全然そんな最先端のところにはいけない、最末端なアナログな世界に日本の刑務所はあるのでなかなか難しい。でもそこは工夫し甲斐があるんですよ。その工夫しがいが日本の刑務所の作品の大変魅力的な部分なんですけども、海外のモデルを真似しつつ、しかし日本の中にある面白さを発見していくような仕方があるかなと思っています。

すごく話が戻ってしまうんですが、先ほど彫刻作品は無理そうかなという話がありました。ただ、風水さんがチャットでシェアしてくださってますけどCAPIC製品という仕方で、刑務作業では器などを作っているんです。刑務所アート展では毎年看板に「再犯防止」と縫われた手芸品を看板代わりに使わせていただいてますが、あれはある種の立体作品ですよね。そういう仕方で刑務作業製品を、通常はそういう作業製品・器だと思って買っているんだけれども、それを作品と思って見てみるというキュレーションの仕方は可能だとは思うんです。もしかしたら諸外国では見ない例かもしれない。

そういう仕方で、最後にGさんからいただいたコメントにもある通り、どういう見せ方・展示のキュレーションはこちらがメッセージを持ってしまうので、刑務所から届いた作品に意味づけを過度にこちらが与えないような仕方で、でも展示を作っていくというように今後もやっていけたらなと思います。例えそれが数が少なくても、やり方次第で面白い展示を作れると思いますので。数が増えたら嬉しいは嬉しいけれども、そのとき集まった作品で何ができるかとを考えたり、何年もやって作品がすごくたまってきたら「刑務所アート動物展」みたいに動物だけ抜き出して展示するとか、いろんなキュレーションの仕方が生まれてくる可能性もあるので。

妄想ばかりたくさん広がって現実の作業は大変ですが、今後もとにかく続けていけばいいと思います。みなさん、こんな長時間大丈夫ですか。

鈴木:もう1回手を挙げてくれているEさんと、チャットに書き込んでくれているHさんで一旦クローズしたいと思います。

Hさん、書き込みありがとうございます。「刑務官や職員も一緒に家族も出せたりする中で、対話的な展示もありなのでしょうか?」

風間:全然ありです。

鈴木:今回、僕と審査員のライラさんで哲学対話というイベントをやったんですが、そうではなく今書き込みを見て思ったのが、対話そのものを1つの作品として会期中に上演すること。例えばご家族と刑務所や犯罪に関わる何人かの当事者を1つのグループで、例えば我々メンバーが起点になって、会期中のこの時間とこの時間はその対話を上演し録画しますとかね。

刑務所にいる受刑者の方の作品は、さっき言ったように道具や郵送手段の制約の中で絵画やエッセイなどになるんですけど「刑務所アート」と我々は掲げているので、実はそういう作り方はありだと思います。それこそArts、いろんな技術・方法の工夫のしどころだと思います。今それってすごくありだなと思いました。ありがとうございます。

あと、風水さんからCAPICについて書き込みいただいてます。CAPICのことを僕らもやっぱりもっと勉強したいなと思います。

風間:東京はたくさんの催事場でよく販売をやってます。もちろん刑務所で矯正展をやっているときは、刑務所に行くことをおすすめします。刑務所の見学も開いている場合があるので、そういうところに行くと製品も見れるし、中でどんな様子なのかも見えるし。

刑務官の人の作品も待ちたいというか、いつか繋がりができるんじゃないかと思っております。今年の某学会で一緒に登壇する人に刑務官の方がいて、その人に「刑務官の人もどうですか」とアプローチして、「応募しませんか」というのはやりたいですね。

鈴木:さっき設計図の話もありましたけど、絵画みたいに本人1人だけで完結しなくてもデザインや設計はその元を送っていただければ刑務所の外で完成する。あるいは、既に文通ボランティアなどもあるように、往復書簡をテキスト作品にするとか。年1回募集・応募でドン、だけではないと僕らも当然思っています。映画上映もそうですね、既に映画祭や上映会をしている団体もあって。他の団体さんがやっているところもありますから、その情報提供・発信などももちろんしたいです。

自分たちで新たにやるとしたら、他との協働のようにまだやってないけど1つの新しいはじまりになるような企画などをしたいです。その辺は「今年は何をやって、何をやらない」という見極めは必要ですが、全然ありだと思っています。

鈴木:では最後に、また挙手してくれているEさん。

参加者E:何度もありがとうございます。

PACの取り組みに非常に興味を持ちました。コメント欄にもちょっと書いたんですけれども、具体的にお手伝いできる場合はフォームからお問い合わせくださいとあったんですけども、私は現在フルタイムではないんですが会社員をしておりまして、今後フルタイムになる可能性もあって。どの程度の粒度で活動されているのかを具体的に伺いたいです。

鈴木:ありがとうございます。ちょうどBさんもそれで問い合わせてくれた1人なんですが、週に1回メンバー5人で定例ミーティングをしています。この間の展示では何人か声かけて作品のデータ化や入稿を手伝ってもらって、心ばかりの謝礼とカタログをお渡ししました。

例えば、この録画はYouTubeにすぐアップするんですが、アクセシビリティを考えると文字起こしを作りたいと思っていて。何かしらイベントなどをやったときに、テキストやコンテンツを残したり、あとミーティングも5人でドタバタしながら毎週集まってやっているんすが、手前の議題やタスク整理など学生さんとかで少し手伝ってくれる人がいたら、議事録作成やインターンみたいなことも助かります。

あと、この間データ入稿をしてくれた何人かはボランティアメーリスを作ってそこに入っていただいてます。Bさんもこの後追加しようと思いますが、ゆるく「タイミングが合うかわからないけど、手を動かせることがあったら声をかけて」というモードの人はそのメーリスに入ってもらって。そんな感じで僕らもだんだん整ってくると思うんですが、定常的に発生するものと、臨時で「どなたかタイミングが合えばお願い」と少し投げ掛けさせてもらいながら、徐々に手が空いていてタイミングが合った人にも助けてもらいつつ。

今は5人でやっていますけど、団体の活動が広がったり、その中で予算や人員を増やしていったりすることも当然あると思います。現時点で僕らの人件費は今年の分は見通しがつかない状態ではあるんですが、助成金や寄付や含めて団体の持続性や足元が整うと、それだけできることも増え、そしたら人や業務の募集も増え、となりますが現在はそんな感じです。ご興味ある方はよかったら後でメーリスに招待させてもらって。「僕らもこういうのがあります」「相談に乗ってください」とか、あとタイミングが合う人はミーティングに来てください。そうやってゆるゆると思っています。

いっぱいありますね。今言ったように、いろいろ助かることはいっぱいあります。

参加者E:わかりました、ありがとうございます。

鈴木:今9時45分ということで、ではそろそろ、風水さんがまたリンクと一緒に情報提供してくださっています、ありがとうございます。

風間:チームで話し合わずにごめんなさい、来月のオープンなイベントでは一旦風水さんに、色々な事例も交えて風水さんから見たこの取り組みや可能性、「いやいやこういうところはやっぱり難しいよ」ということなどお話をお聞きしたいです。こんな公開型で打診して断りづらくして申し訳ないですが、来月セッティングしたいと思います。

鈴木:メルマガや寄付、イベントなど、とにかくだんだん整ってきつつあります。フォローしたり繋がったりしていただいて、タイミングが合えばまた来てください。毎月1回、何かしらゲストトークや活動報告など内容を決めて、お知らせして開いていきます。今日もですが、来れなかった人も見れるように録画や文字起こしをしようと思っております。みなさんのタイミングが合うときに事が動いたりするので、みなさんの日々の暮らしの片隅に置いていただければ。

最後にチャット欄になりますが、もしよかったらカタログのご購入、ボランティアなど手伝っていただけるとありがたいです。あと今日もこうやってお声やお名前、顔を共有してくださった方々がいますし、今日来られなかったけどクラウドファンディングとや展示に来てくれた人など、全員ではないけど名前や顔をなるべく知って覚えることができているというのは僕たちもとてもありがたいです。その中でこちらから「こういうのご一緒できないですか」などお声がけさせてもらうこともあると思うので、今後ともよろしくお願いします。

今日はキックオフということで、僕たちが結構お話する場面が多かったと思うんですが、これに合わせてですね僕たちもある程度報告や言語化ができたと思っています。これを基に、今後は次に向けて新しい動きを起こしたいと思っております。

みなさんとはじまりを一緒に作っていけたらと思います。これからもどうぞよろしくお願いします。今日は本当にありがとうございました。

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