あなたへ-炙り mirra

当時流行っていた出会い系。一人で会うのが不安だからと言う友人に、付き添って来たのがあなたでした。郊外にあるコンビニで待ち合わせて駐車場に車を停めると店内にはあなた達のみ。一応着いたとメールを送り合流。てかどうやって来たの? あいさつもそこそこにとりあえず車に乗ってもらい出発。あてもなく車を走らせながらの自己紹介という儀式の最中に、突然あなたは、私の事を知ってると言い出しました。 陸に顔すら見れてない状況で誰だっけ?と困惑している私に構わず"あの時はありがとうございました。あの後ちゃんとお礼も言えず、そのままになってしまい申し訳ありませんでした"と、ていねいに謝られてしまう。 話が全く見えない。人違いじゃないの?と確認をしても間違いなく私だという。その自信はどこから来るのだろう? 運転どころではなくなって来たので、落ち着ける場所へ車を停め、改めて話を聞くとバイト先の大事な書類を配達する途中に、その書類が風で飛ばされ四散してしまい一部が行方知れずに。必死に捜していた時、近くにいた私に「書類を見掛けませんでしたか?」と声を掛けた所、人手を募って一勢に捜してくれ、近くの用水路にまで入り捜してくれたけど結局、見つからず、バイト先からは叱られたし、後日私を捜したけど、見つけることが出来ず、名前もわからないままだったという。  そこまで話を聞いてやっと思い出した鈍感な私。けど何年前の話?どうりでわからない訳だ。(ありがとう昔の自分) あの後どうしたの?とか友人さんを置き去りにしたまま、2人で盛り上がり

そこから、友人さんも交えて遊ぶ様になってだんだんと2人で遊ぶことの方が多くなりました。 お互いがお互いのことを詮索しないまま、ずっといたので、私はあなたのことを自分の都合のいいように解釈したままでした。  そのことがその時の私には救いでした。 いつもは、夜中に遊んで、早朝に帰るといった流れだったのに、あの日あなたは、大都市の方へ行きたいといいます。提案通り、夜中の国道を走ること約2時間、都市部の有名な砂浜に着き、誰もいない砂浜で暫く遊びました。帰りの時間のことを考え、そろそろ帰ろうと車へ戻る途中、あなたはこのまま都市に遊びに行こうと言い出します。時間も時間だし私はこのまま帰ろうと言っても、あなたはどうしても遊びに行きたい、とめずらしく譲りませんでした。 結局は私がへ理屈をならべ半ば無理矢理に地元へ帰りましたがあなたが導いてくれた蜘蛛の糸に掴もうとすらしなかった私。  お釈迦様もびっくりです。 あの頃の私は、出来損なった欠陥品で、ただ見た目は人間なので辛うじて社会に紛れ込めていただけでした。 屈折した欠陥品は迷走し自分を追い詰めていき大切なものすら傷付け裏切り、いつまでも引き摺り続け、 苦しくても、心が悲鳴をあげても必ず来る朝。そして 今更自分が救われるとは思えない暗闇の中で、 壊れることも壊すことも出来なかった私が、

壊してしまったのは人の命でした。 あなたとはお互いケータイしか連絡手段がなかったので、 私の逮捕で音信不通、一方的に終わることとなりました。  私の行いは自業自得で、全く同情の余地すら無く 今も刑に服し償いの日々を過ごしています。 あの日、あなたの言う通りにしていたらといまだに考えてしまいます。 長々とお時間を取らせてしまい申し訳ありませんでした。 あなたの人生に幸多からん事をお祈り致しております。

作品タイトル

あなたへ

作者

炙り mirra

作品本文

当時流行っていた出会い系。一人で会うのが不安だからと言う友人に、付き添って来たのがあなたでした。郊外にあるコンビニで待ち合わせて駐車場に車を停めると店内にはあなた達のみ。一応着いたとメールを送り合流。てかどうやって来たの? あいさつもそこそこにとりあえず車に乗ってもらい出発。あてもなく車を走らせながらの自己紹介という儀式の最中に、突然あなたは、私の事を知ってると言い出しました。
陸に顔すら見れてない状況で誰だっけ?と困惑している私に構わず"あの時はありがとうございました。あの後ちゃんとお礼も言えず、そのままになってしまい申し訳ありませんでした"と、ていねいに謝られてしまう。
話が全く見えない。人違いじゃないの?と確認をしても間違いなく私だという。その自信はどこから来るのだろう? 運転どころではなくなって来たので、落ち着ける場所へ車を停め、改めて話を聞くとバイト先の大事な書類を配達する途中に、その書類が風で飛ばされ四散してしまい一部が行方知れずに。必死に捜していた時、近くにいた私に「書類を見掛けませんでしたか?」と声を掛けた所、人手を募って一勢に捜してくれ、近くの用水路にまで入り捜してくれたけど結局、見つからず、バイト先からは叱られたし、後日私を捜したけど、見つけることが出来ず、名前もわからないままだったという。
そこまで話を聞いてやっと思い出した鈍感な私。けど何年前の話?どうりでわからない訳だ。(ありがとう昔の自分)
あの後どうしたの?とか友人さんを置き去りにしたまま、2人で盛り上がりそこから、友人さんも交えて遊ぶ様になってだんだんと2人で遊ぶことの方が多くなりました。 お互いがお互いのことを詮索しないまま、ずっといたので、私はあなたのことを自分の都合のいいように解釈したままでした。
そのことがその時の私には救いでした。
いつもは、夜中に遊んで、早朝に帰るといった流れだったのに、あの日あなたは、大都市の方へ行きたいといいます。提案通り、夜中の国道を走ること約2時間、都市部の有名な砂浜に着き、誰もいない砂浜で暫く遊びました。帰りの時間のことを考え、そろそろ帰ろうと車へ戻る途中、あなたはこのまま都市に遊びに行こうと言い出します。時間も時間だし私はこのまま帰ろうと言っても、あなたはどうしても遊びに行きたい、とめずらしく譲りませんでした。
結局は私がへ理屈をならべ半ば無理矢理に地元へ帰りましたがあなたが導いてくれた蜘蛛の糸に掴もうとすらしなかった私。
お釈迦様もびっくりです。
あの頃の私は、出来損なった欠陥品で、ただ見た目は人間なので辛うじて社会に紛れ込めていただけでした。
屈折した欠陥品は迷走し自分を追い詰めていき大切なものすら傷付け裏切り、いつまでも引き摺り続け、
苦しくても、心が悲鳴をあげても必ず来る朝。そして
今更自分が救われるとは思えない暗闇の中で、
壊れることも壊すことも出来なかった私が、
壊してしまったのは人の命でした。
あなたとはお互いケータイしか連絡手段がなかったので、
私の逮捕で音信不通、一方的に終わることとなりました。
私の行いは自業自得で、全く同情の余地すら無く
今も刑に服し償いの日々を過ごしています。
あの日、あなたの言う通りにしていたらといまだに考えてしまいます。

長々とお時間を取らせてしまい申し訳ありませんでした。
あなたの人生に幸多からん事をお祈り致しております。

作品ジャンル

手紙

展示年

2025

応募部門

テーマ部門①「あなたへ」

作品説明

情けない私のことを
容赦なく笑って頂ければ
本望です。

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