「あなたへ」-蝉

令和4年8月24日午前、あなたを送り出した後、私も いつも通りマンションを出ようとした所、何の前触れも無く逮捕。そのまま車に乗せられ警察署へ……。 この日からあなたに本当に大変な心配と苦労を掛けて行く事になって行きます……。 弁護士費用に被害弁償金費用を用意してくれたあなたの思いは私の釈放を願っての事だったのだと思います。あなたの思い通り1度目の逮捕の罪は不起訴となりました。逮捕後は接見禁止となり1度もあなたと会えないままでした……。弁護士を通じてあなたへ連絡を……差し入れ等もあなたは私がお願いをした物は送ってくれました……。そして、不起訴となる前日に弁護士を通じて再度お金の差し入れをお願いをすると、あなたは「何んで釈放されるのに?」との返事でしたが無理を聞いてくれました。不起訴となった日に2度目の再逮捕となったのです。神戸へと移されました……。 この再逮捕の件は前もって1度目の逮捕の時に聞いていました。また、その次の件もある様な事も……。 ですが、あなたへ伝える事が出来ませんでした……。 再逮捕となり神戸へ移り、ここでようやく接見禁止が取れました。そして、約1ヶ月ぶりにあなたと会う事

が出来ました。面会室に座るあなたを見ると涙が出て 来ました……。小さくなった様に感じました……。必死で涙をこらえている姿を見ると私はただただ謝るだけでした……。あなたの目から大きな一粒の涙が流れた姿は今でも忘れません……。面会時間の20分などあっと言う 時間で何を話したのか……。それから、2回目の面会と言うのが、3度目となる再逮捕となる1日前の事でし た……。1度目の面会から10日が過ぎていました……。 この日の面会でも、私の神戸での件は不起訴となる事が分かっていた為、あなたは次はどこへ行くのと聞くばかりでした……。私が四国の高松と言うと、それはどこなの?と……。と言うのもあなたは韓国人なので日本の地名等の事が分からなかった為、私が説明すると遠い所だから面会には行けないかな……と、とても悲しい顔をしていました……。この日から少し長い時間が掛かります……。高松に移ってからも不起訴、再逮捕を繰り返しました……。弁護士を通じてあなたの声を伝えてもらった時には、「いつまで続くのですか」との、初めての弱気の声を……。本当に申し訳ない気持ちで一杯でした……。高松へ移ってからはもっぱら手紙でのやり取りでした。でも、韓国人のあなたは日本語は分かるが文字が書け

ないと言う事。生まれて初めて手紙を書いたと最初の手紙に書いてくれました……。お願いも全て聞いてくれ ました……。そして、起訴され裁判が始まりました……。 結審の日に情状証人として法廷に立ってくれました。検事、弁護士の質問にたどたどしい日本語で涙を流しながら答えてくた姿は本当に一生忘れる事は無いです。その後の面会、約半年ぶりに会って、アクリル板越しでの会話はあまり覚えておらず、最後に言った言葉が「待っ ててくれるかい」と言うとあなたは「死んでしまう」と笑って答えたのが最後となりました……。 令和4年8月24日の午前、その前日に少し言い争いがありました。あなたと一緒に住む様になったのも総てあなたのおかげです。あなたは夜のお仕事をしていて 私はそのお店へお客として飲みに行った時にあなたと知り合い、連絡の交換をしてから付き合いが始まりました。私が住んでたのはあなたのお店からバイクで30 分かかります……。毎日私はあなたに会いにお店へ行きました……。あなたもお店が終われば私の住まいへ来てもくれました。私が住まいの場所が悪いとあなたが言うのでホテル住まいも始めました。そしてあなたの名義でマンションを借りて一緒に住むようになりました……。

あなたと初めて会った時点で、私は犯罪に手を染めていました……。あなたから私に何をしているの?何の仕事をしているの?との問いに私は正直に言える訳 にも行きませんので……。 ごまかしていました……。 あなたもお金の面で少し困っていた事もあったので私が渡すお金も何の疑いも無く受け取っていました……。その内に私の方もお金に困りあなたに助けてももらいました。この頃から関係がギクシャクし始めて来ました……。あなたからの問いに何度本当の事を言おうかと考えま した……。ですが、大好きなあなたと別れるのがイヤだったので本当の事は言えませんでした……。 逮捕から2年5ヶ月ですが今でもあなたの声は勿論顔も気持ちも笑い顔等も一日たりとも忘れていません……。何故あの時、あの日、本当の事が言えなかったのが……。本当の事を言って2人で助け合って行けば、今は無かったのかなと……本当に心の底から後悔をしています。あなたからの言葉、手紙等は最後の面会から今日まで何にもありません……。仕方無いのでしょうが…………。 あなたは今何をしていますか?あなたに心の底から謝ります……。本当にごめんなさい許して下さい……。 あなたの事は今後も忘れずちからをもらって生きて行きます。

作品タイトル

「あなたへ」

作者

作品本文

令和4年8月24日午前、あなたを送り出した後、私も いつも通りマンションを出ようとした所、何の前触れも無く逮捕。そのまま車に乗せられ警察署へ……。
この日からあなたに本当に大変な心配と苦労を掛けて行く事になって行きます……。
弁護士費用に被害弁償金費用を用意してくれたあなたの思いは私の釈放を願っての事だったのだと思います。あなたの思い通り1度目の逮捕の罪は不起訴となりました。逮捕後は接見禁止となり1度もあなたと会えないままでした……。弁護士を通じてあなたへ連絡を……差し入れ等もあなたは私がお願いをした物は送ってくれました……。そして、不起訴となる前日に弁護士を通じて再度お金の差し入れをお願いをすると、あなたは「何んで釈放されるのに?」との返事でしたが無理を聞いてくれました。不起訴となった日に2度目の再逮捕となったのです。神戸へと移されました……。
この再逮捕の件は前もって1度目の逮捕の時に聞いていました。また、その次の件もある様な事も……。
ですが、あなたへ伝える事が出来ませんでした……。
再逮捕となり神戸へ移り、ここでようやく接見禁止が取れました。そして、約1ヶ月ぶりにあなたと会う事が出来ました。面会室に座るあなたを見ると涙が出て 来ました……。小さくなった様に感じました……。必死で涙をこらえている姿を見ると私はただただ謝るだけでした……。あなたの目から大きな一粒の涙が流れた姿は今でも忘れません……。面会時間の20分などあっと言う 時間で何を話したのか……。それから、2回目の面会と言うのが、3度目となる再逮捕となる1日前の事でし た……。1度目の面会から10日が過ぎていました……。
この日の面会でも、私の神戸での件は不起訴となる事が分かっていた為、あなたは次はどこへ行くのと聞くばかりでした……。私が四国の高松と言うと、それはどこなの?と……。と言うのもあなたは韓国人なので日本の地名等の事が分からなかった為、私が説明すると遠い所だから面会には行けないかな……と、とても悲しい顔をしていました……。この日から少し長い時間が掛かります……。高松に移ってからも不起訴、再逮捕を繰り返しました……。弁護士を通じてあなたの声を伝えてもらった時には、「いつまで続くのですか」との、初めての弱気の声を……。本当に申し訳ない気持ちで一杯でした……。高松へ移ってからはもっぱら手紙でのやり取りでした。でも、韓国人のあなたは日本語は分かるが文字が書けないと言う事。生まれて初めて手紙を書いたと最初の手紙に書いてくれました……。お願いも全て聞いてくれ ました……。そして、起訴され裁判が始まりました……。 結審の日に情状証人として法廷に立ってくれました。検事、弁護士の質問にたどたどしい日本語で涙を流しながら答えてくた姿は本当に一生忘れる事は無いです。その後の面会、約半年ぶりに会って、アクリル板越しでの会話はあまり覚えておらず、最後に言った言葉が「待っ ててくれるかい」と言うとあなたは「死んでしまう」と笑って答えたのが最後となりました……。
令和4年8月24日の午前、その前日に少し言い争いがありました。あなたと一緒に住む様になったのも総てあなたのおかげです。あなたは夜のお仕事をしていて 私はそのお店へお客として飲みに行った時にあなたと知り合い、連絡の交換をしてから付き合いが始まりました。私が住んでたのはあなたのお店からバイクで30 分かかります……。毎日私はあなたに会いにお店へ行きました……。あなたもお店が終われば私の住まいへ来てもくれました。私が住まいの場所が悪いとあなたが言うのでホテル住まいも始めました。そしてあなたの名義でマンションを借りて一緒に住むようになりました……。
あなたと初めて会った時点で、私は犯罪に手を染めていました……。あなたから私に何をしているの?何の仕事をしているの?との問いに私は正直に言える訳 にも行きませんので……。 ごまかしていました……。
あなたもお金の面で少し困っていた事もあったので私が渡すお金も何の疑いも無く受け取っていました……。その内に私の方もお金に困りあなたに助けてももらいました。この頃から関係がギクシャクし始めて来ました……。あなたからの問いに何度本当の事を言おうかと考えま した……。ですが、大好きなあなたと別れるのがイヤだったので本当の事は言えませんでした……。
逮捕から2年5ヶ月ですが今でもあなたの声は勿論顔も気持ちも笑い顔等も一日たりとも忘れていません……。何故あの時、あの日、本当の事が言えなかったのが……。本当の事を言って2人で助け合って行けば、今は無かったのかなと……本当に心の底から後悔をしています。あなたからの言葉、手紙等は最後の面会から今日まで何にもありません……。仕方無いのでしょうが…………。
あなたは今何をしていますか?あなたに心の底から謝ります……。本当にごめんなさい許して下さい……。
あなたの事は今後も忘れずちからをもらって生きて行きます。

作品ジャンル

手紙

展示年

2025

応募部門

テーマ部門①「あなたへ」

作品説明

刑務所と言う限られた中での生活に置かれても社会一般の人達と同じ感情を持ち合わせている事と言うよりそれ以上の思いを持ちながら日々生活をしていると言う事を知ってもらえたら良いなと考えました。
大好きな人を思う気持ちは皆んな一緒だと考えましたので……。

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