回復する未来へ #1 私たちが「刑務所アート展」に取り組む理由 Prison Arts Connections共同代表ダイアログ

一般社団法人Prison Arts Connections(PAC)は、2025年1月に法人設立1周年を迎えました。これを機に、共同代表である鈴木悠平と風間勇助が、団体の現在地とこれからを語る対談シリーズ「回復する未来へ」をスタートします。

第1回となる今回は、二人がPACの活動に至った個人的な原体験や、これまでの「刑務所アート展」で見えてきた手応え、そして直面している運営上の課題について率直に語り合いました。 「刑務所の内と外」「被害と加害」といった壁を超え、私たちが目指す社会的な「回復の回路」とは何か。その背景にある思いをお届けします。

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文字起こし

鈴木悠平(以下、鈴木): こんにちは。一般社団法人Prison Arts Connections(以下、PAC)共同代表の鈴木悠平です。

風間勇助(以下、風間): 同じく共同代表の風間勇助です。よろしくお願いします。

鈴木: これから、「回復する未来へ」というタイトルで、僕たち2人の対談をお届けすることにしました。PACは「刑務所アート展」というプロジェクトを中心に活動しています。刑務所に関わる人たちの芸術作品を集めて展示を行い、普段は壁で隔たれている刑務所の内と外をつなぎ、被害と加害という立場を超えて「回復」について一緒に考えたり、対話したりする場をつくる活動です。

これまで展示を3回開催してきましたが、活動開始から3年、法人化して1年が経ちました。ありがたいことに多くのご支援をいただいていますが、活動を続けていく上での課題や、「本当はこういうことをやっていきたい」という悩みも抱えています。そうした率直な現状を共有することで、一緒に活動してくれる仲間や、アドバイスをくれる方と出会いたいと思い、この対談を企画しました。

まずは初回ということで、僕と風間さんがなぜこの活動をしているのか、個人的な背景も含めてお話ししたいと思います。

活動に関わるようになったきっかけ

風間: 私は現在、奈良県立大学で「アートマネジメント」という、アートと社会をつなぐ領域を教えています。もともと美術館やギャラリーだけでなく、路上などさまざまな場所にアートを持ち込み、そこで表現が果たす役割を学んできました。その延長線上に「刑務所」という領域への関心がつながっています。

個人的な背景をお話しすると、私自身はセクシュアルマイノリティ(ゲイ)です。かつてそのことを親にカミングアウトした際、受け入れてもらえず、拒絶された経験があります。一番信頼できると思っていた相手から拒絶されたショックは大きく、一時期は自暴自棄になり、「自分の人生なんてどうでもいい」と感じていました。

その頃、かつて獄中作家として知られた永山則夫さんの手記に触れる機会がありました。そこには、世界に対して絶望し信頼を失いながらも、ノートに書くことを通じてなんとか世界とのつながりを保とうとする、痛切な「表現」がありました。それを見て、表現すること——書くこと、描くこと、歌うこと——は、世界とのつながりを取り戻すための最も重要な手段なのだと確信したのです。

刑務所の中にいる人々の「聞かれていない声」があるのではないか。そう考え、社会復帰支援のNPOに関わるようになり、その後、刑務所とアートの研究・実践を始めました。

鈴木: 永山則夫の手記を偶然手に取ったとき、共鳴するものがあったんですね。

風間: そうですね。「孤独」という文字が何度も繰り返されていたり、断片的な言葉の羅列だったりしましたが、亡くなった後もその痕跡が受け継がれていることに衝撃を受けました。永山さんほどの過酷な境遇ではありませんが、私も世界から拒絶された感覚を持っていたとき、その痛みに共鳴してしまいました。

鈴木: 僕自身も「書くこと」に支えられて生きてきた人間です。幼少期から周囲とうまく馴染めない感覚がありましたが、文章を書くことで自分や世界を理解してきました。以前は障害福祉の分野で、「異なる身体や立場を持つ私たちがどう共に生きるか」をテーマに仕事をしてきました。

僕がこの活動に関わるようになったきっかけには、自身の「加害」の経験があります。30代前半の頃、女性に対してハラスメントをしてしまい、相手を傷つけてしまいました。お相手に対して謝罪し、自分としてできうる限り、責任を果たすための対応をしました。また、自身の依存的な傾向に向き合うために自助グループに通うなど、再発防止と生き直しのための行動を続けてきました。

しかし数年前、その件がネット上で拡散され、いわゆる「炎上」状態になりました。もちろん大元にあるのは自分の過ちですが、事実とは異なる情報も含めて不特定多数の人からいろいろな言葉を投げかけられ、社会から監視され、責められ続けているような恐怖の中で、ほとんど寝たきりの状態になってしまいました。

そんなとき、SNSで風間さんの活動を見かけたんです。「刑務所のアート? こんな活動があるんだ」と思い、連絡を取ったのが始まりでした。僕自身は刑務所に入ったわけではありませんが、一度「加害者」というレッテルを貼られると、人格のすべてを否定され、生き直す機会さえ奪われてしまうような社会の空気を肌で感じました。だからこそ、PACの活動は他人事ではないと感じたんです。

風間: 鈴木さんから連絡をもらったときは驚きましたが、実際に会って話す中で、ネット上の言説と本人の姿には乖離があることを改めて感じました。裁判や報道では「処罰」を決めるための言葉ばかりが注目されますが、そこでは語られない真実や、回復へ向かおうとする当事者の姿があるはずです。

鈴木:やってしまった加害行為自体は肯定されるものではありませんが、行為に対する処罰を課して責任を負わせることと、その人の全人格を否定して排除することは別物で、切り分けて考えるべきです。しかし、今の社会には、法的な手続きとは別に、過剰な制裁や不寛容さがあるように感じます。

「許し」や「正解」を求めない対話の場

鈴木: 事件の直後や裁判の場では、被害者と加害者が落ち着いて対話することなど到底不可能です。でも、刑務所アート展では、直接対面するのではなく、作品を挟んで出会うことで、ある種の「余白」が生まれます。作品とペンネーム、簡単な解説があるだけの空間で、来場者がそれを受け取る。そこには時間と距離があるからこそ、ようやく対話の余地が生まれるのではないかと感じています。

風間: 第1回の展示を開催したとき、一番懸念していたのは「犯罪被害に遭われた方がどう思うか」ということでした。批判は当然あるだろうと覚悟し、ひっそりと始めたのですが、そこに偶然、ある被害者遺族の方が来場されたんです。

その方は「自分の事件の加害者がいるわけではないけれど、加害者が刑務所でどう過ごし、どんな思いでいるのかを知りたくて来た」とおっしゃいました。展示をご覧になった後、「いろいろな思いがあることを知れてよかった」と言ってくださったんです。それは決して「許した」という意味ではありません。ただ、裁判や制度の外で、知りたいという自分の気持ちに向き合うための「回路」が、今の社会には不足しているのだと気づかされました。

鈴木: 「許す/許さない」や「反省した/していない」といった二者択一の結論を求めすぎると、かえって硬直してしまうことがあると思います。 去年の第3回展示のとき、初日に来られた地元のご年配の方が、作品を見て「素晴らしい活動だと思うけど、私は親戚を殺されているから、やっぱり許せないわ」とおっしゃって帰られました。僕はその反応も、すごく大事なことだと思ったんです。

僕たちは、来場者に「こう思ってほしい」「許してほしい」と誘導したいわけではありません。被害の立場にある方が「許せない」と感じることも含めて、その場に多様な反応が存在すること自体が重要なんです。結論ありきではなく、そこから何を感じ、何を考えるかを委ねられる場でありたい。

社会の隅々に「回復の回路」を広げる

風間: 刑務所から届く表現を、まずはただ「受け止める」。そこからスタートするしかないと感じています。それが更生につながるか、反省につながるかという出口を先に設定するのではなく、どう受け取り、どう言葉を返すか。そのコミュニケーションの場を作っていくことが今の段階では必要です。

もちろん、自助グループのような守られたクローズドな場も絶対に必要です。一方で、もう少し社会に開かれた公的な場所で、加害や被害、回復について話せる「回路」も必要だと感じています。

鈴木: 諸外国の研究では、アート活動が再犯リスクを下げたり、社会復帰にポジティブな影響を与えたりするというデータもあります。僕らもそれは大事だと思っていますが、「再犯防止のためにアートをやる」と目的化してしまうと、何かがずれてしまう気がするんです。

再犯防止はあくまで結果であり、第一にあるのは、一人ひとりの切実な表現や、それを通じた対話の機会を守ること。PACの役割は、裁判とマスメディア以外で、市民が犯罪や回復について考え、語り合える「回復の回路」を、社会の隅々に広げていくことだと思っています。

 

運営の課題と、これから仲間になる人へ

鈴木: ここまで理想や手応えを話してきましたが、最後に現実的な課題もお話しさせてください。法人化して1年、活動を始めて3年になりますが、正直なところ「お金」も「人」も足りていません。これまではクラウドファンディングやプロジェクトごとの助成金でなんとか展示を開催してきましたが、団体の基盤を支える「平時の運営費」や、事務局機能を持つ人員が不足しています。僕と風間さんも無報酬で、他の仕事をしながら時間を捻出しているのが現状です。

風間: プロジェクト単位ではデザイナーさんやボランティアの方々に支えられていますが、日々のウェブサイト更新、問い合わせ対応、SNS発信、そしてファンドレイジング(資金調達)といった地道な「基盤づくり」を担う人がいないんです。僕や鈴木さんとは別の視点で、団体の足腰を一緒に作ってくれる仲間——事務局長なのか、COO的な役割なのか——を今、切実に求めています。

鈴木: 今の話を聞いて「ビビッ」と来た方、どんな形でもいいのでぜひご連絡ください。まだ規模は小さいですが、長く活動を続け、社会に根付かせていくために、新しい仲間の力を必要としています。

 

Information:PACからのお知らせ・ご支援のお願い

対談をご覧いただきありがとうございました。Prison Arts Connectionsでは現在、活動を共に広げてくださる仲間と、継続的なご支援を募集しています。

1. 運営メンバー・プロボノ募集

現在、団体の基盤強化を担う事務局メンバー(業務委託・プロボノ等)を募集しています。

  • 広報・SNS運用
  • ファンドレイジング(寄付キャンペーンの企画・実行)
  • 事務局運営(問い合わせ対応、会計補助など)

「回復の回路」を社会に広げる活動に、あなたのスキルを活かしませんか? まずはカジュアルにお話しできればと思います。詳しくはWebサイトの問い合わせフォームよりご連絡ください。

[お問い合わせフォームはこちら]

 

2. 法人設立1周年記念マンスリーサポーター募集(〜2/21まで)

PACは2025年1月に法人設立1周年を迎えました。これを記念して、寄付プラットフォーム「Syncable(シンカブル)」にて、マンスリーサポーター募集キャンペーンを実施しています。 展示会などのプロジェクトだけでなく、日々の対話の場を維持し続けるためには、皆様からの継続的なご支援が不可欠です。月額のご寄付で、私たちの活動を支えていただけないでしょうか。

▼キャンペーン詳細・ご寄付はこちらから

https://syncable.biz/campaign/9350

(キャンペーン期間:2026年2月21日まで)

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