【実施報告】「プリズン・アート展〜“なぜ犯罪を?”考える社会に〜」(和歌山県立図書館)

和歌山県立図書館の展示室でひらかれた「プリズン・アート展」の入り口

2024年11月20日(水)〜12月18日(水)のおよそ1ヶ月間、和歌山県立図書館の展示室にて「プリズン・アート展〜“なぜ犯罪を?”考える社会に〜」を開催しました。ご来場いただいたみなさま、本当にありがとうございました。

本記事にて、写真や来場者の感想なども交えながら、開催の様子を報告いたします!

展示概要

「プリズン・アート展〜“なぜ犯罪を?”考える社会に〜」

会期:2024年11月20日(水)〜12月18日(水)
平日 9時〜19時、土日祝 9時〜18時
※月曜休館

入場無料

会場:和歌山県立図書館 展示室

主催 和歌山市BBS会  Prison Arts Connections
展示写真提供:NPO法人CrimeInfo

展示設計:久保恵理
インストーラー:成田貴亨

助成 立ち直り応援基金  科研費24K03586
後援 法務省  和歌山県  和歌山県教育委員会
公益財団法人和歌山県人権啓発センター
令和6年度「きのくに文化月間」連携事業

出品作品、展示の様子

過去2回開催した「刑務所アート展」の応募作品の中から作品を選び、絵画や書、漫画、詩、短歌、俳句、川柳、エッセイを含む全40作品を展示しました。作品選定としては、さまざまな作品ジャンル、白黒の絵やカラフルな絵、きれいな文字や力強い文字、優しい表現や力強い表現など、なるべく多様な表現を見てもらえるよう意識しました。

プリズン・アート展の展示作品の様子

プリズンアート展開催の様子から、書の作品の展示風景

以下の写真は、漫画作品や詩、エッセイの作品のコピーを簡易製本し、手に取って読んでもらえるよう机のうえに置いた様子です。通常の「刑務所アート展」では、主催者が常駐して作品の説明や案内ができるため、作品の原物を置いています。しかし、今回は常駐することが難しいことから、それでも手に取ってじっくりご覧いただくため、複写を用意しました。

プリズン・アート展にて、漫画作品や詩、エッセイ作品の展示風景

展示室の奥に丸い柱があり、その柱には「壁の向こうを想像し、回復を考える。」というメッセージを配置しました。この文字は、会場である和歌山県立図書館の外からも、大きな窓のひらかれた様子からよく見えるものとなりました。

プリズン・アート展の様子を建物の外から見た様子。大きな窓に「壁の向こうを想像し、回復を考える。」という文字がよく見える。

柱に配されたこの文字の周囲には、刑務所の写真を貼っています。この写真は、NPO法人CrimeInfoより提供いただいたものです。すべての写真はCrimeInfoのフォトギャラリーページからもご覧いただけます。

柱に貼られた刑務所の写真の展示風景

柱に貼られた刑務所の写真の展示風景

また、「刑務所アート展」でも毎回展示している、死刑囚であった長谷川敏彦さんの絵も、ガラスケースの中で展示しました。長谷川敏彦さんは、被害者遺族にあたる原田正治さんに手紙と絵を送り、事件から10年という月日を経て面会を果たしました。加害者と被害者遺族が面会を通して交流した、その時の原田さんの言葉と共に、関連資料なども展示しました。

死刑囚であった長谷川敏彦さんの肖像画の展示風景

死刑囚であった長谷川敏彦さんの絵画の展示風景

そして、展示室を出た図書館内には、「プリズン・アート展関連図書コーナー」を設置いただきました。和歌山県立図書館の蔵書の中から、刑務所とアートに関連するブックリストを作成しました。このブックリストは、こちら からもご覧いただけます。

来場者数

およそ1ヶ月間の期間中の来場者は、正確な数字はわからないそうですが、推計で1,000人を超えたと、主催の和歌山市BBS会より報告を受けました。回答いただいたアンケート枚数は144枚にも及びました。

本当にありがとうございました。

参加者の声

回答いただいたアンケートの中から、来場者の感想を一部紹介いたします。

受刑者が自分達とは違う、変わった人ばかりだと思い込んでいたことに気づきました。犯罪を犯してもその人達は確かに私達と同じ普通の人で、綺麗なアートを生み出すのだと知りました。
でも一番の印象としては、「なんでこんなにきれいな絵を描くのに、すてきな詩を作るのに犯罪を犯してしまったんだろう?」という疑問が大きかったです。プリズンアート展は受刑者の人たちにとっても、展示を見る人にとっても、良い取り組みだと思います。(10代)

ていねいに作られた作品が多いと思った。心にしみる物が多かった。(50代)

五七五がおもしろかったです。私は刑務官ですが、いつも私言を交せない被収容者の心の内を少し感じれて興味深かったです。(20代)

どの作品にも、何らかの自筆の文字が添えられていて、その実物はパンフレットで以前に見たときよりも、その人の存在を感じさせるものでした。丁寧で美しい字の方が多いのは気のせいでしょうか。字が美しいって素敵だなと思いました。(40代)

もっと色々作品を観たいと思った。
もっと広く知ってもらうことが大事だなと思った。(50代)

会期中のイベント

映画『ふくろう人形の秘密』の上映会イベントの様子

会期中の2024年12月7日(土)には、映画『ふくろう人形の秘密』を上映し、その後に同作品の映画監督である高木裕己さん、企画者である和歌山市BBS会会長の高垣晴夫さん、そしてPAC代表の風間勇助の3人でトークショーをひらきました。

この映画は、法務省が主催する「社会を明るくする運動」作文コンテストにおいて、法務大臣賞を受賞したある小学生の作文から着想を得て制作されたものです。主人公の女の子が、ふとしたきっかけから刑務所作業製品「ふくろう人形」と出会い、刑務所という場所にはどんな人たちがいるのか、保護司の活動をする祖父の話を聞くなど、女の子の視点から社会復帰について学んでいく過程が描かれたものです。

トークの中では、風間が映画の中で使われる「主語」に注目しました。登場する刑務官は「受刑者は〜」という主語によって、家族から愛情を得られなかった人たちが多いなど、その傾向的特徴を説明していて、保護司の活動をする祖父は、具体的な固有名として名前で呼ぶ、これは的を射ているような描写に見えました。

刑務官と受刑者は、自由を奪う側と奪われる側というある種の役割が固定化された関係であり、緊張感もあり、なかなか互いを一人の人間として向き合うことが難しい環境があると思います。最近では、名字に「さん付け」で呼ぶという指針(*)が示されたようですが、それまでは刑務官は受刑者を番号で呼んでいました。一人ひとりと向き合う環境づくりは始まったばかりです。

「受刑者らの呼び方、4月から「さん」づけに 全国の刑務所や拘置所で」(朝日新聞、2024.2.15)

刑務所アート展の活動は、その表現の多様性に向き合うことから、一人ひとりが違う存在として向き合えることを話しました。アートを通してこうした問題に取り組む可能性は何か、登壇者・来場者のみなさんと考えることができたと思います。

そして、企画者の高垣さんとの間では、社会復帰や犯罪・非行からの立ち直りの問題について、この社会の多くの人に知ってもらうことが難しい状況を共有しました。今回の展示で、「社会を明るくする運動」の強化月間である7月ではなく、文化の季節である11月の開催となったのも、普段は関心のない人にも届けられるのではないかと、「アート」という言葉に期待を寄せてくださってのことでした。

メディア取材一覧

多くのメディアのみなさんに、本展の取材をしていただきました。一部ご紹介いたします。

会場配布冊子

展示会場では、本展によせて制作した簡易冊子を配布しました。以下より閲覧いただけます。
※本冊子の無断転載・複製・複写はご遠慮ください。

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