運営メンバー

 

風間勇助(共同代表)

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略歴

1991年静岡生まれ。奈良県立大学地域創造学部講師。
東京藝術大学にてアートプロジェクトの実践を通したアートマネジメントを学び、卒業後に民間シンクタンクにおいて文化庁委託事業を中心とした調査研究業務に従事。退職後、東京大学大学院文化資源学研究室において、「刑務所と芸術」を研究テーマにアートマネジメントの観点から、刑務所(矯正施設)の内と外との対話の回路をどのようにつくっていくことができるのかについて研究と実践を重ねる。この社会で埋もれてしまうかもしれない小さな声に、どのように寄り添い社会に表現としてコミュニケーションを生み出せるのかを考えている。

このプロジェクトへの思い

人は誰でも加害者にも被害者にもなり得ます。大小はあっても、人を傷つけてしまうこと、傷つけられた経験があると思います。そして多くの場合、傷つけた経験=加害性は向き合いにくかったり、気づきにくかったり、誰かに話すことが難しかったりします。周囲からは理解不可能な存在と、遠ざけられるかもしれません。でも、傷を受けた/与えた経験のその先も人生が続いていく時、どのようにその経験と向き合うか、どう生きていくか。そんな表現がこの社会の片隅にあったら、必要な人には届くんじゃないか。そんな思いで、私にできるのは表現を投げかけることと、その表現を受けとめてもらえる場をつくることだけで、どんなコミュニケーションが生まれるかは集まった表現次第、仲間次第。この活動を通して、一人の人生や回復にみんなで寄り添う社会に近づけば嬉しいです。それはアートにしか成し得ないと思います。

鈴木悠平(共同代表)

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略歴

1987年生まれ。インターミディエイター®
東日本大震災後の地域コミュニティの回復と仕事づくり、学ぶことや働くことに障害のある人や家族を支援する企業での現場支援や研究開発、メディア運営等を経験したのち独立、2020年に株式会社閒を設立。医療的ケアニーズや重度障害のある人たち、罪を犯して刑務所に入った人や出所した人たち、精神疾患や依存症のある人たちなどのリカバリーや自立生活に向けた支援に携わりながら、「生活を創造する」知と実践の創出・展開に取り組む。

このプロジェクトへの思い

私もたくさん間違えてたくさん傷つけてきました。これからもまた間違うかもしれません。痛みと向き合い引き受ける責任が当事者一人ひとりにはあり、しかしその孤独な責任を果たすためには、他者と繋がり、対話することが、どうしても必要なのです。アートは、その矛盾を可能にする、か細い糸です。他の誰でもない自分自身の物語を懸命に紡ごうとしている、今にもちぎれそうで頼りない糸たちに、あなたの持っている糸をかけて、ほんのひととき、支えてくださいませんか。

 

大森かずえ

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略歴

岡山生まれ。東京学芸大学、卒業。画号「大森かずえ」美術家として活動。
幼少期から、水墨画を描く母の影響を受け、毎日絵を描いて過ごす。
大学時代に自ら企画運営をし、積極的に個展やグループ展のディレクションをこなすが、24歳の頃、病気治療で記憶を消されて、2週間意識不明に陥る。また、後遺症で全身に麻痺が残り、一時は絵が全く描けなくなるが、とにかく描きたい一心でリハビリを経て、1枚の油絵を制作。その絵が第34回近美春季展にて大賞を受賞する(現在、病気は完治)。
現在は、制作活動と並行し、アート作品を生かすためのデザインやキュレーション、ディレクションも手がけるマルチプレイヤー。

このプロジェクトへの思い

昔から深く自分の探究に籠る性格だった為、他人との関わりに様々な疑問がありました。
自分の興味あること以外に興味のある人との交流を、極端に避けて生きてきた幼少時代を経て、人と想いを共有できる喜び、想いのすれ違いからの心の痛みを知り、少しずつ人間らしくなったような気がします。アートと向き合う意外に生きる意味を見出せなかった私は、それ故に多くの人を傷つけてきたと思います。
「ちゃんと想いを伝える」
そんな当然な事もコミュニケーションが取れないとできません。
刑務所アートは、現代の日本において異なるコミュニティで生きる人たちとの新しい形のコミュニケーションツールだと思います。
様々な社会通念や情報、問題があったとしても、アートは誰しもの心を覗き合うことを可能にするものだと、私は信じています。

 

黒木萌(くろぎもえ)

黒木萌 プロフィール画像

略歴

大阪大学卒業。延岡市出身、在住。精神科訪問看護を運営する企業の広報チームの仕事や、地元の子育て支援センターで事務を担うほか、定時制高校で国語の講師をしている。また通信制大学で社会福祉士取得に向け勉強中。すべての人が「ありのまま」の自分を愛し、安心して暮らせる多彩でジェンダーギャップのない社会の実現をめざす一般社団法人「ハウリング」の理事も務める。

このプロジェクトへの思い

芸術家の父のもとに育ち、アートは幼いころから身近にありました。成長するにつれて、日常生活を送るなかでだれかを傷つけたりだれかに傷つけられたりすることがあり、少しずつ身近な加害や被害について考えるようになりました。だから刑務所もアートも、わたしの日常からそう遠くない地続きのものとしてあって、それなのに刑務所はわたしたち塀の外にいる人間からすると通常あまりにも遠い隔たったところです。

しかし塀の中にいる人たちも当然ながら生身の肉体と感情をもった人間です。人は人との対話を必要とします。他者とのコミュニケーションがあってこそ、感じ考え、自分を掘り下げ、他者を知り社会を知り、回復に向かっていったり日々を生きていったりすることができます。

このプロジェクトは、塀の外と内とで断絶されたコミュニケーションの回路をつなぎ直す営みだとわたしは考えています。その回路として、だれしもの側にアートがあったなら。たとえ塀の中にいて使える画材が限られていても。そうした制約の中から、いったいどんな作品が生まれてくるのでしょうか。それを通してわたしたちはどのようなコミュニケーションができるでしょうか。

みなさんにも共にこの試みを楽しんでもらえたら幸いです。

 

杉田曠機(すぎたこうき)

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略歴

1983年3月宮崎県生。鹿児島大学工学部卒。在学中に、書道家としてそのキャリアを始め、国内外へ展開。世界的ブランドやホテル、アメリカの美術館、神社仏閣、大手企業へも作品やデザインを収めた。国際的な展示会やイベントにも多く出演。2013年のニューヨークでの個展以降、美術史をベースに模索。絵画や彫刻など、表現媒体に広がりを見せる。2023年にSUGRを立ち上げ、アートやクリエイション、テクノロジーを通じて、文化を探究している。

このプロジェクトへの思い

刑務所アートの取り組みを最初に聞いた際、とても意義のあるプロジェクトだと感じました。参画させていただけたことに心から感謝申し上げます。
私自身、学生時代から社会とアートの関係性に注目し、戦争や貧困、ジェンダーなどの社会問題のリサーチを行なっていました。紛争地帯では少年兵の問題もあり、子供の頃から人を殺すしかない環境で、それが当たり前として育った子たちもいます。
日本でも家庭環境や地域によっては、犯罪を犯してしまう人は少なからずいます。私たちが思っている以上に、物事の要因は複雑です。
刑務所アート展を通じて、彼らが紡ぐ作品とぜひ対話されてみてください。何を感じるのか。そのコミュニケーションから新たな観点が生まれることと思います。