2026年6月23日(火)〜6月28日(日)の6日間、府中市美術館1階市民ギャラリーにて「府中刑務所アート展2026」を開催しました。ご来場いただいたみなさま、開催にご協力いただいたみなさま、本当にありがとうございました。
本記事にて、写真や来場者の感想なども交えながら、開催の様子を報告いたします。

Photo: Masaru Goto / Reminders Project(以下同)
展示概要
壁の手ざわり、対話のはじまり 府中刑務所アート展2026
会期:2026年6月23日(火)〜6月28日(日)10:00〜17:00
会場:府中市美術館 1階市民ギャラリー(東京都府中市浅間町1丁目3番地 都立府中の森公園内)
入場無料
出展作家:府中刑務所で服役中の方、同所で働く職員の方とご親族、全国各地の刑務所で服役中または服役経験のある方(過去の「刑務所アート展」応募作家)
ディレクター:鈴木悠平
インストーラー:玉置真
展示協力:弓指寛治、風間勇助
写真:後藤勝
広報物デザイン:大森かずえ、杉田曠機
設営・運営協力:石川れい子、浦丸真太郎、小野木彩乃、加藤このみ、黒木萌、後藤早苗、コミヤナオ、齊藤智仁、鈴野ことあ、夏海花澄、三石晃生、宮川知宙、山本悠乃
主催:一般社団法人Prison Arts Connections
共催:府中刑務所、リマインダーズ・プロジェクト
後援:府中市
助成:アーツカウンシル東京〔芸術文化による社会支援助成〕、公益財団法人 三菱財団
本展は、PACと府中刑務所の共催による、新しい形の展示会でした。民間非営利団体主催のアート展として初めて、1つの刑務所から施設全体の作品募集協力を得て実現したもので、受刑者の方に加え、同所で働く職員の方やそのお子さんからの作品応募も初めて実現しました。展示作品は3部構成・計169点です。
出品作品、展示の様子
第1部 府中刑務所アート展2026 応募作品
本展に向けて府中刑務所内で募集をかけて集まった全66点(絵画27点、俳句15点、短歌15点、ブロック折り紙6点、書3点)を展示しました。募集期間は5月25日から6月19日、会期前週の金曜日ギリギリまで作品応募を受け付けました。多くの手続きが必要ななか、部署の垣根を越えて本展の実現に尽力いただいた職員のみなさまに、改めて感謝いたします。
絵画クラブ参加者が描いた絵、刑務作業の一環としてつくられたイラストや模型、余暇時間に居室でかかれた絵や文など、作品がつくられた環境もタイミングもさまざまです。服役中の方だけでなく、府中刑務所で働く職員さんやそのお子さんからの応募もありました。


PACが本展やこれまでの展示を「受刑者アート展」ではなく「刑務所アート展」と銘打ってきたのは、作者が受刑者であるかどうかではなく、刑務所という場所あるいは制度、その制限された環境の中で生まれる表現であることに着目してきたからです。例年の展示と同じく、作品名と作家名(ペンネームまたは匿名)、本人による作品紹介コメントを展示し、個人の属性(受刑者か職員か、年齢や性別など)は開示していません。
第2部 絵画クラブとの「壁」を越える協働の記録
2025年の夏から秋にかけて、PACは府中刑務所の絵画クラブを訪問し、共同制作を行いました。「平和と共存」をテーマに、府中市のシンボルである大きなケヤキの木を中心とした風景画をメンバーみんなで描き、毎年11月3日に開かれる「府中刑務所文化祭」(2025年は第50回)に出展。来場者に描き込んでもらって「完成」させました。
本展では、文化祭来場者の描き込みが加わった大型絵画の実物と、リマインダーズ・プロジェクト後藤勝さんによる記録写真パネルを展示し、刑務所の内と外を隔てる「壁」を越えた協働の軌跡を紹介しました。



第3部 壁の向こうからのメッセージ ―「刑務所アート展」応募作品セレクション―
過去3回にわたって開催した「刑務所アート展」の応募作品からのセレクションに加え、過去の応募作家から募集期間外に届いた新作、そして刑務所経験のある眼鏡屋・岩崎風水さんの提供作品コーナーをあわせて展示しました。
展示が終わった後も、開催報告のお手紙を送ると数名からお返事をいただいたり、募集をかけていないのに新作が次々と届いたりと、壁の向こうから表現のエネルギーがあふれ続けています。どんな場所や環境に置かれても、誰に頼まれたわけでもなく制作を続けるそのエネルギーに、アートの原点を見るような思いです。




来場者と応募作家の対話を生み出す
会場では、来場者から応募作家へのメッセージを受け付ける「コメントシート」を設置し、会期を通して91枚が寄せられました。これらは会期終了後、開催報告・作品カタログとともに、応募作家一人ひとりにお届けします。また、お子さん連れでもゆっくり過ごしてもらえるよう、子ども向けの漫画コーナーも設けました。

来場者数
6日間の会期中、延べ707人にご来場いただきました。1日あたりの来場者数は、これまでの刑務所アート展の中で最大のペースとなりました。「府中市美術館に来てたまたま立ち寄った」という方も多く、地域に開かれた美術館での開催ならではの、新しい出会いがたくさん生まれました。
本当にありがとうございました。
参加者の声
ご来場者アンケート(回答130件、満足度平均8.4/10点)から、感想の一部を紹介いたします。
府中という土壌が、刑務所も地域に開く取り組みをしていることも相まって、「受刑者アート展」ではなく「刑務所アート展」であることがストンと心に落ちてきました。その隔たりをどう融かしていくのか、時間はかかるけれど触れ続けたいと思いました。
美術館に来る途中、府中刑務所の横を通り、大きな壁の中を知り得なかったのですが、この展示の作品を通して、刑務所の中の人と会話しているような気持ちになりました。
絵に作者の手書きの解説があったのが良かったです。どういう意図で描いたのか、人柄が伺われて、作品への理解の手助けになりました。
作品をつくる中で作者自身がアートからエネルギーをもらい、また与える側にもなるのなら、それは社会復帰や更生のみならず、人間的な成長に繋がっているのだろうと想像できました。
私自身、受刑経験があるので、ものすごく共感しました。
府中刑務所の文化祭は大混雑ですが、美術館で開催してくれると見に行けます。会期が短いので、もう少し長くしてほしいです。
会期中のイベント
会期中には、2回のトークイベントを展示会場内で開催しました。
6月24日(水)には、いずれも刑務所経験のある、岩崎風水さん、串田大我さん(デカトワル)、竹田淳子さん(株式会社生き直し)の3名によるクロストークを行いました。当日の様子は、岩崎風水さんのYouTubeチャンネルでご覧いただけます。
6月27日(土)には、西岡慎介さん(府中刑務所所長)、松尾真紀子さん(一般社団法人みとびら理事)、岩崎風水さん(刑務所経験のある眼鏡屋)をお迎えし、PAC共同代表理事・鈴木悠平の司会でトークイベントを開催。会場は満席となり、立ち見が出るほどの盛況でした。

刑務所を「運営する立場」「外部から協働する立場」「経験した立場」——3つの異なる立場から、刑務所を取り巻くアート表現やものづくり、そしてそれを通した対話について語り合う、本展ならではの時間となりました。府中刑務所の現状や拘禁刑導入後の変化、刑務作業の中にアートの自由を持ち込む試み、そして服役経験の中での表現の記憶。「壁」をキーワードに、率直な言葉が交わされました。
本展のメディア掲載情報は、こちらの記事にまとめています。
今後も、Prison Arts Connectionsは、アートを通して「壁」を越え、「はじまり」をつくり続けるべく活動してまいります。引き続き、応援・ご参加いただけると幸いです。
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