作品タイトル
刑務所の常識と、外の社会の常識の違いを考えること
作者
祈り人
作品本文
私が刑務所で生活していく中で、大切にしている時間は、1日の中で聞いたり見たりした言葉や行動の中で、日本社会の一般の人にとって非常識と思われるような出来事は有っただろうか、と考えることです。例えば昨年の2021年の8月に以下のような事があった。受刑者がお風呂の後に、部屋に戻って、タオルをセッケンで泡立てて洗っているのを見た刑務官が、烈火の如く怒って受刑者を叱嘖していた。
『お前、いまセッケンでタオルを洗っていたな!』『洗ったら悪いことを知って、洗っているお前が、健全な懲役をしていると言えるのか!』
という言葉を聞いた。しかし、私はその日のテレビのCMで、洗剤やアルコールの商品の紹介のときに、「コロナ禍の今年は、私達がこれまでの中で、いちばん手を洗った年でした』☺という内容を見ました。感染対策といいながらも、刑務所では、3日間もお風呂に入らず、タオルも自由に洗えないのが『常識』である。このような常識は他にもたくさん思い浮かぶ。刑務所の中で、お昼休みの会話のときに、『あいつは殺しても良いよ』『早く出所して再び麻薬をしたい』と発言しても、何も注意も罰も無いのである。しかし、例えば更衣室で、困っている人を見かけたときに、許可を得ずに手助けしたりすると、それだけで1週間以上も1日中、正座をする懲罰になってしまう。私は出所後に再犯をしないために、これらのような常識の違和感を考える時間を大切にして、刑務所での生活をしていきたい。
作品ジャンル
エッセイ
展示年
2023
応募部門
課題作品部門
作品説明
刑務所で懲役の生活をしていく中で、刑務所の常識を、出所後も自分がもっていたら、すぐに再犯をしてしまうのではないか、という考えから浮かびました。
私の居る刑務所では、7月下旬から9月下旬の2カ月間、コロナ流行がありました。今回の応募に関する郵便物が私の部屋に入ったのは、10月末でした。そのとき初めて知った課題テーマの作品を書くことは、時間的に大変でした。