思いで – カリン様

思い出  刑務所生活も七年目に突入した。ある日の昼下がり、 良く晴れた日だった。単独室の窓のむこう、鉄格子のそのまた向こう。刑務所特有の目隠しの鉄枠の上に一匹のスズメを見つけた。  あれは何齢の時だったか...?今は亡き、おばぁちゃんとの思い出。おばあちゃんに手を引かれて、自宅に帰っている道中のことだった。道路に一匹のスズメかった。そのスズメは血だらけで、息絶えていた。幼かった私は、その痛々しいスズメの死骸を見て、半べそをかいていたように思う。 しかし、おばぁちゃんは、物怖じもせずいとおしみ介抱するかのように、その血だらけのスズメを両の手の平に載せて、自宅まで連れて帰った。私は、おばぁちゃんが何をするのかがわからずオロオロと後をついていったのを覚えている。すると、おばぁちゃんは家に着くなり自宅の庭に小さな穴を掘り、そこにスズメの死骸を入れて、お墓を作った。そして、2人で手を合わせたのだ。  それから、数時間後だったか?翌日だったかは忘れたが、家の中から玄関のドアを開けると、 家の前の電線の上にズラッーとスズメの大群が、今まで見たこともな教のスズメがチュン、チュンと鳴きながらいるではないか!!それは、子供ながらに
忘れることのできな光景だった。  非現実的な発想だと今の私でも思うが、「スズメ わかってるんやな」 その時、 何の根拠もなく思った。死んだスズメの仲間やと、今でも私はそう思う。  35年ほど経った今、一匹のスズメを見て思い出した。鉄格子のむこう側にいる一匹のスズメ。何を思って、 私のことを見、私の目の前に現れたのだろうか?ただそこに居るだけ。それはわかっている。わかっていても、 考えずにはいられない、あの日の思い出。それほど、あの時の光景は印象に残っている。  あの時のスズメが、畳三畳のまさしく鳥籠のような部屋に閉じ込められている私を見たら何と言うだろうか?目の前に居てるスズメに「なんでそんなことしたんや?あの時の素直で純粋な君に戻りなさい」と言われているようで、なんだか変な気持ちになるのは拘禁病のせいだろうか?刑務所生活が長くなると精神が研ぎ澄まされて感傷的になるのだろうか?  一匹のスズメを見てわかったことがある、思い出はいつもここに(心)ある!!ということ。過去は現在に繋がり現在は、未来に繋がる。だから、遠い未来また、スズメ
を見て思い出すことが必ずある。こうしてペンを走らせたことが良き思い出として思い出されることを願う。  そして、今度はこんな鳥籠のような狭い部屋ではなく、大空の下。自由の身(更生した姿で)となって公園でスズメにエサでもあげながら思い出したいも のだ。  カリン 様

作品タイトル

思いで

作者

カリン様

作品本文

思い出
刑務所生活も七年目に突入した。ある日の昼下がり、
良く晴れた日だった。単独室の窓のむこう、鉄格子のそのまた向こう。刑務所特有の目隠しの鉄枠の上に一匹のスズメを見つけた。
あれは何齢の時だったか…?今は亡き、おばぁちゃんとの思い出。おばあちゃんに手を引かれて、自宅に帰っている道中のことだった。道路に一匹のスズメかった。そのスズメは血だらけで、息絶えていた。幼かった私は、その痛々しいスズメの死骸を見て、半べそをかいていたように思う。 しかし、おばぁちゃんは、物怖じもせずいとおしみ介抱するかのように、その血だらけのスズメを両の手の平に載せて、自宅まで連れて帰った。私は、おばぁちゃんが何をするのかがわからずオロオロと後をついていったのを覚えている。すると、おばぁちゃんは家に着くなり自宅の庭に小さな穴を掘り、そこにスズメの死骸を入れて、お墓を作った。そして、2人で手を合わせたのだ。
それから、数時間後だったか?翌日だったかは忘れたが、家の中から玄関のドアを開けると、 家の前の電線の上にズラッーとスズメの大群が、今まで見たこともな教のスズメがチュン、チュンと鳴きながらいるではないか!!それは、子供ながらに忘れることのできな光景だった。
非現実的な発想だと今の私でも思うが、「スズメ わかってるんやな」 その時、 何の根拠もなく思った。死んだスズメの仲間やと、今でも私はそう思う。
35年ほど経った今、一匹のスズメを見て思い出した。鉄格子のむこう側にいる一匹のスズメ。何を思って、 私のことを見、私の目の前に現れたのだろうか?ただそこに居るだけ。それはわかっている。わかっていても、 考えずにはいられない、あの日の思い出。それほど、あの時の光景は印象に残っている。
あの時のスズメが、畳三畳のまさしく鳥籠のような部屋に閉じ込められている私を見たら何と言うだろうか?目の前に居てるスズメに「なんでそんなことしたんや?あの時の素直で純粋な君に戻りなさい」と言われているようで、なんだか変な気持ちになるのは拘禁病のせいだろうか?刑務所生活が長くなると精神が研ぎ澄まされて感傷的になるのだろうか?
一匹のスズメを見てわかったことがある、思い出はいつもここに(心)ある!!ということ。過去は現在に繋がり現在は、未来に繋がる。だから、遠い未来また、スズメを見て思い出すことが必ずある。こうしてペンを走らせたことが良き思い出として思い出されることを願う。
そして、今度はこんな鳥籠のような狭い部屋ではなく、大空の下。自由の身(更生した姿で)となって公園でスズメにエサでもあげながら思い出したいも のだ。
カリン 様

作品ジャンル

エッセイ

展示年

2023

応募部門

課題作品部門

作品説明

私の住んでいる部屋は、3階にあって、めったに鳥は見れません。ましてや目隠しがあって、外の風景なんて、少し青空が見えるぐらいです。その少しの青空をバックに、(鉄棒に止まる)ハト、わからない鳥を見ると、すごくハッピーな気持ちになるのです。そして、スズメを見ると、必ずあの幼かった日のことを思い出すのです。幼い頃から、荒れた生活でしたが、数少ないきれいな思い出です。思い出も。 私の大切な時間と言えるのではないでしょうか?また、このような機会を頂いて過去を振り返り、自分を見つめ、思いを表現する時間を作ることができました。これも、私の大切な時間といえると思います。これも、良き思い出となると思います。ありがとうこざいました。
(人間には考えの及ばないことか実際に起きるんです。神の御業ですね。)

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