作品タイトル
邂逅
作者
シャーマン・アイリス
作品本文
ふるさとは、遠くにありて想うもの
人間が物事を考える時、五感で受け取ったものを言葉や絵で表現するという「情報化」 は大切なことであると思います。
しかし丁寧に情報化することは切り捨てられてしまいがちでもあります。
人に対してだけでなく自分のやることにも常に意味を求められます。
58年前の事、私が小学校に入学して1年生の3学期をむかえた日に早朝あたり一面は銀世界になり、積雪は30センチ以上積もり、その日の授業は1年生から6年生までの全員150名で、「大雪だるま作り」を校庭で完成した出来事が、すごく心に刻まれていることが、私の生涯人生の中で一番鮮明に覚えています。
校庭のど真ん中に作られた「大雪だるま」は一週間位で溶けてしまいましたが、雪国県でもない、栃木県南東部に位置する我が母校は平成5年に110年の歴史に幕が下され廃校になりました。
大自然が育む山里の雪景色は現在では見る事はないですが、この地に暮らした縄文人が自在に山と共存していたことを物語っている豊かな自然に真摯に向き合う人々の手によって可能となった。真面目で人情豊かな人々、ふるさとを訪れる人達にも縄文から今に続く日本人の精神性の奥深さを感じ取ってもらえるはずです。
若い頃私は心の襞(ひだ)のいかなる複雑な事であっても、それは明快極まりない平易で表現、難解ということは、さまざまな羞恥心が表現を屈折させていて、苦悩の息遣いさえ聞こえぬほどに整えられ、誰でも理解されやすい形にすることが慎みであり、完成ということに気付いたのである。
一種の個人主義的に筋の通ったものの考え方なのかもしれないが、身に沁みて思うのは、人を改変させるということは実に難しい、自分との戦いだ、ということなんだろうと思います。人を尊敬することが快感だということを不思議な触感が働くように難い人間邂逅の場になるだろうという予感を信じていたいのです。
過去や未来を思い悩まずに目の前のことを集中して楽しむことは、朝目をめざめたことの感謝、息をしていることの感謝…
目の前のことに感謝していると自然と今の幸せを感じ楽しめることこそ、一生の最大の豊かな道ではないだろうか…
作品ジャンル
エッセイ
展示年
2024
応募部門
課題作品部門「日常」
作品説明
柔らかく差し込む陽光の下で友と語らい、美しい音色に心を溶かした古里の思い出は、刻々と表情を変えてゆく景色のように自由に移り変わる私の心に優しく寄り添ってくれる「ふるさと」を感じながら作品にしてみました。